leah millis/Reuters ハリス米副大統領は、紛争後のガザをどうするかに関する計画に焦点を合わせるようホワイトハウスに求めている

 【ワシントン】ジョー・バイデン米大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ガザでの紛争を話し合うために十数回の電話会談を行ってきた。その際、耳を澄ませていた人物がいる。カマラ・ハリス米副大統領だ。

 民主党内に生じているイスラエル支持の強硬派と紛争へのバイデン政権の対応を厳しく批判する複数のグループとの間の溝を埋めようとする有力政治家の一人として、ハリス氏は政府高官らと私的なやり取りをする中で存在感を増している。この件に詳しい複数の関係者が明らかにした。

 これら関係者によると、ハリス氏は、ホワイトハウスがパレスチナ人へのより強い共感を明確に表明し、紛争後のガザをどうするかに関する計画に焦点を合わせるよう求めている。この姿勢はハリス氏の公式発言にも見て取れる。その最たるものは、同氏が国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の首脳級会合に参加するためアラブ首長国連邦(UAE)のドバイを駆け足で訪問した際、「イスラエルは罪のない民間人を守るために、より多くのことをしなければならない」と述べたことだ。

 進歩派の民主党ストラテジスト、ワリード・シャヒド氏は、ハリス氏の発言について、政権がイスラエルにもっと批判的な態度を取るべきかを知るための「観測気球」だと捉えている。だが、政権による一層の対応を望む民主党員からすると、発言は十分納得できるものではなかったと述べる。「多くの民主党員は今、言葉よりも行動が重要だと感じている」という。

 ある政府高官によると、ハリス氏はこの2カ月間に、紛争の影響を受けたパレスチナ系米国人の何人かと言葉を交わした。その中には大事な人を失った人や、最近ガザから離れた人もいた。ユダヤ人とアラブ人の地域社会のリーダーや、解放された2人の米国人の人質の家族と対話をしたほか、まだ行方が分からない米国人の家族とも面会した。

 ハリス氏は、ユダヤ人社会とイスラム社会の両方とつながりがある。同氏の夫はユダヤ人の弁護士、ダグ・エムホフ氏だ。エムホフ氏は反ユダヤ主義への対応を政権における自身の職務の優先事項にした。ハリス氏にはまた、南アジアのコミュニティー内にイスラム教徒の支持者がいる。彼らは移民の娘としての同氏の生い立ちに共感を持っている。ハリス氏は今年、副大統領公邸でイスラム教の祝祭「イード」を催した。

 ハリス氏の外交面での役割は同氏の政治的役割と合致する。バイデン大統領が2期目の任期を勝ち取るための戦いで支持率低下に苦しむ中、ハリス氏は大学生を中心とした若い有権者や、進歩派、非白人有権者から幅広い支持を集めるという役割を担ってきた。これらの有権者グループはすべて、バイデン政権の対イスラエル政策に不満を表明している。

 ハリス氏はノーザン・アリゾナ大学を訪れた際、今回の紛争に対する若い有権者の憤りを目の当たりにした。イスラム組織ハマスによるイスラエル侵攻直後の10月、同大の学生がバイデン政権の対応はパレスチナ人に対して「非人道的」だと断じ、大喝采を浴びた。「爆弾を作るのをやめろ」と叫ぶ学生もいた。

 イスラエルの軍事行動への支持は民主党内でも低下する一方だ。ギャラップが11月1~21日に実施した世論調査によると、民主党員の63%がガザ地区でのイスラエルの軍事行動を支持しないと回答。また、民主党員で35歳未満の67%、有色人種の64%が不支持を表明した。

 抗議活動を行う人々が定期的にホワイトハウスの前に集まり、バイデン大統領の移動中も追いかけ、完全停戦を呼びかけるよう大統領に迫っている。一部の民主党議員も政権に対し、イスラエルへの支援を条件付きにするよう求めている。

karim sahib/Agence France-Presse/Getty Images ハリス副大統領はドバイで開かれているCOP28で、「イスラエルは(ガザの)罪のない民間人を守るために、より多くのことをしなければならない」と述べた

 バイデン氏は、まずは人質全員の解放を勝ち取る必要があるとして、完全停戦への支持には消極的な姿勢を見せており、どんな形でも戦闘の一時停止が長引けばハマスが態勢を立て直し、さらなる攻撃を行えるようになる恐れがあると警告している。バイデン政権は、完全停戦ではなく、戦闘の一時停止の交渉を手助けしてきた。

 ハリス氏は、中東の有力指導者らとの会談も行ったドバイで、戦闘の一時停止が有効だったことは証明されているとし、バイデン政権の対応を称賛した。その一方で、政権内では最大級とも言える厳しい言葉でイスラエルの軍事攻撃を批判した。

 「あまりにも多くの罪のないパレスチナ人が殺されている。率直に言って、民間人の被害の大きさと、ガザから送られてくる画像や動画は衝撃的だ」。ハリス氏はこう語った。

 ハマスが支配するガザ当局によると、死者は1万5000人以上に上り、そのほとんどが女性と子どもだという。この死者数は戦闘員と民間人が区別されていない。パレスチナ人の武装勢力は、10月7日の襲撃の際に連れ去った人質を依然拘束している。イスラエル当局はこの襲撃で1200人以上が死亡したと発表している。

 米政権内には、ハリス氏の他にもガザでの民間人死者数の多さを公に批判している高官もいるが、バイデン大統領自身はハリス氏ほど踏み込んだ発言をしていない。ホワイトハウスのジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は4日、この問題を巡りバイデン氏とハリス氏の見解に「違いはない」と述べた。

evelyn hockstein/Reuters バイデン大統領は完全停戦への支持には消極的な姿勢を見せており、どんな形でも戦闘の一時停止が長引けばハマスが態勢を立て直し、さらなる攻撃を行えるようになる恐れがあると警告している

 パレスチナ人の犠牲者について、バイデン氏はたびたび、ハマスが戦闘員や施設を市民の生活の中に紛れ込ませているせいだと述べ、イスラム教徒やアラブ系米国民の怒りを買っている。また、10月の記者会見では、ガザでの死者数に疑問を投げかけるとともに、罪のないパレスチナ人の犠牲は戦争の代償だとの見方を示唆した。

 上院議員だったハリス氏の国家安全保障担当顧問を務め、現在は「ジューイッシュ・デモクラティック・カウンシル・オブ・アメリカ(JDCA)」CEOのヘイリー・ソイファー氏は、ハリス氏と他の高官の発言に違いは見られないとの見方を示した。JDCAはこの紛争へのバイデン政権の対応に協力的な立場を取る。

 「政権は一致した意見を述べており、その中には副大統領の意見も含まれている」とソイファー氏は話した。

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