勃起不全(ED)を見たら動脈硬化を疑え、は医療者の常識だが、もう一つ、2型糖尿病(T2D)も疑ったほうがいいようだ。
EDは糖尿病の合併症の一つで、30代男性患者の3人に1人、50歳以上になると2人に1人が「糖尿病性ED」というデータがあるほどだ。国内には100万~200万人の患者がいると推測される。
一方、T2Dに先行して、EDを発症するケースもある。
米セントルイス大学の研究グループは地域の医療データベースから、2008年1月~22年6月に地域の病院を受診した18~40歳の男性23万1523人(平均年齢28.3歳)のデータを解析。3132人がEDと診断されている。
ED群は非ED群よりも低テストステロン血症の割合が高く、肥満や高血圧、脂質異常症、うつ病、不安症などの併存疾患を持っている人が多かった。
登録データを2年追跡したところ、非ED群の7226人、ED群の255人が新たに糖尿病予備群、もしくはT2Dと診断。非ED群の発症率が3.2%だったのに対し、ED群は8.1%と発症リスクが2.57倍高かった。
また、T2D発症のみに絞っても、ED群の発症リスクは、非ED群よりも高かった。ED群は、総じて非ED群より発症リスクが38%高い。
興味深いのは、ED発症からT2Dと診断されるまでの時間だ。ED群の255人を解析すると、3分の1が同じ日に「EDもあるけど、糖尿病予備群もしくはT2Dだね」と診断されている。
結局、同日組を含めED群の半数は1カ月以内に、およそ75%、4人に3人が1年以内に「EDで糖尿病予備群、もしくはT2D」と診断されていたのだ。
研究者は「若年者のEDはT2Dのアラームサイン」としたうえで「EDの治療とともに、定期的に尿糖検査や血糖値測定などをすべき」としている。
EDを自覚すると、インターネットで治療薬やサプリを購入しがちだが、一度はまともな医療機関を受診してみよう。もしかすると、T2Dの警告かもしれない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)