だが、戦時中の食糧統制により製造が禁止に。戦後半世紀を経て、味や醸造法を知る人が絶えるのを憂えた地域文化の篤志家や料理店が、米田酒造に復活製造を依頼。試験醸造を重ねて、1990年に復刻した。濃い甘味とうま味は、名物の野焼き蒲鉾や、出雲そばのつゆをおいしくし、出雲の食に不可欠の料理酒になる。米田酒造は粕取り焼酎で仕込む本格的な味醂も製造し、秋から翌年4月までは日本酒を、5月からは味醂と地伝酒、6月は梅酒、その後は焼酎と、多品種の酒造りを行う。旧蔵を改装した売店では試飲もでき、庭の茶室では、酒を楽しむ会を開催。郷土の味を今に伝える。

新日本酒紀行「出雲地伝酒」出雲地伝酒
●米田酒造・島根県松江市東本町3-59●代表銘柄:豊の秋、本みりん 七寶酒粕取焼酎仕込、酒粕取焼酎 七寶●杜氏:上濱智信●主要な米の品種:もち米、五百万石、山田錦、改良雄町
新日本酒紀行「出雲地伝酒」醪の櫂入れ Photo by Yonedasyuzou
新日本酒紀行「出雲地伝酒」醪に木灰を入れる Photo by Yonedasyuzou