新日本酒紀行「出雲地伝酒」米田酒造外観 Photo by Yohko Yamamoto

醪に秘伝の木灰を加えて搾る、濃厚なうま味と甘味の料理酒

 味付けの基本「さしすせそ」は、砂糖、塩、酢、醤油、みその頭文字で、味付けの順番を覚えやすくしたものだ。最初の砂糖は、サトウキビを原料にしたものが一般的で、日本の庶民が使いだしたのは江戸時代の後期。それまでの甘味調味料は米を発酵させた麹や酒、味醂だった。

 城下町、島根県松江市は、中海と宍道湖に挟まれた水の都。7代藩主の松平治郷が茶文化を広め、汽水湖の宍道湖で取れるスズキやシジミなどを宍道湖七珍と呼び、食文化が花開く。そんな出雲地方で生まれたのが地伝酒だ。原料にもち米を使い、米麹は日本酒の2倍量、仕込み水は日本酒の約半分という濃厚な造りを行い、じっくり寝かせた醪(もろみ)に木灰を加え、中和させてから搾るのが特徴。火入れ殺菌の代わりに灰で殺菌するため灰持酒(あくもちざけ)とも呼ばれ、熊本県の赤酒も類酒だ。