「当然、飲酒量が驚くほど増えました。昼から長時間コンスタントに飲み続け、ブラックアウトして気がついたらリビングで朝を迎えるという生活の繰り返し」

 仕事と大量飲酒を両立させる生活は、そう長くは続きません。とうとう体が悲鳴を上げ、二日酔いで激しい頭痛と発熱が現われるようになったのです。

 社会生活にまで支障をきたすようになり、「このままではいけない」と思い、インターネットで検索を開始。治療には断酒のイメージしかなかったのですが、「減酒外来」を初めて知り、「これなら通えるかもしれない」と筆者のクリニックを受診することにしたのです。

減酒のために決めた
4つのルール

「最初の診察を受けたとき、先生に『1日にどれくらい飲んでいますか?』と聞かれました。純アルコール量の計算式を教えてもらって、先生と一緒に計算したところ、1日180~200gというものすごい量になっていました。すると先生から、『まず、100gにしてみませんか』と提案されて、ホッとしたのを覚えています。いきなりゼロにしろと言われたらキツかったと思いますが、『それならできそう』と思える量だったので、気が楽になったんです」

 哲也さんは、次のような減酒マイルールを決めて減酒を進めることにしました。

・自宅では飲まない
・飲酒頻度を減らす。飲むのは、イベントや友人からの誘いのときだけ
・飲むときの量は、無理をせず飲みたい分だけ
・減酒アプリを利用し、月1回通院して医師に報告する

 受診して以来、純アルコール量を計算するようになり、お酒の飲み方がずいぶん変わったといいます。哲也さんの場合、減酒アプリを自分で分析してみると、100gを超えると翌朝に体調不良になることが分かってきました。そのため、60gを超えないように努力するようになりました。だいたいの目分量ではなく、数値で計算できるようになると、自分が飲んでいるアルコールの量を客観的に理解しやすくなります。

 そんな哲也さんの減酒に対するモチベーションは、いくつかあります。まず思い浮かぶのは、お酒に溺れる父親や妹の姿です。