「苦手を克服するための方法を身につけましょう」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
「苦手意識」と向き合う
「私は〇〇が苦手です」
と、苦手意識を強く持つことがあると思います。
本当に苦手かもしれませんが、正直、必要以上に「苦手であること」を思い込んでいる気はしませんか。
じつは、拒絶することには「そうしているほうがラクだから」ということも側面としてあるのです。
人から言われて少しだけやってみたゲームがあまりうまくいかず、
「ゲームは苦手だから」
と、すぐに投げ出すことはできますよね。
もちろん、そうやって決めることも人生を生きやすくする方法だと思うのですが、中には向き合わないといけないときもあります。
たとえば、異性との問題です。
「キモいと言われて女子から避けられていました」
「容姿をバカにされたことで、男子と会話することができません」
というように学生時代にトラウマがあると、「異性が苦手だ」という苦手意識を持ちます。
しかし、成人してもそのままでいいのでしょうか。
おそらく、どこかで乗り越えないといけない試練が訪れますよね。
あるいは、職場でなんとなく苦手な人がいるかもしれません。
それも同様に、仕事の現場では一緒に1つのことに取り組まないといけないでしょう。
「苦手だ」と決めたものから逃げ続けられるほど、人生は簡単ではないんですよね。
「拒否反応」を乗り越えるには
とりあえず「苦手である」ということにしておいて拒否をする行動は、自分を守ります。
しかし、それが原因でより問題がこじれるような場面があります。
たとえば、「ケンカの後の仲直り」のような瞬間です。
ケンカした相手から「ごめんね」と歩み寄ってきたときに、頭では許そうとしても、冷たくあしらってしまうことがありませんか。
「本当は許したほうがラクになるのに……」
と、理性的な自分のことをどうしても受け入れられず、反射的に拒否してしまうのです。
こうやって、理性と感情が噛み合わず、メンヘラな自分をこじらせてしまったとき、いったい何が起こっているのでしょうか。
理性と感情のギャップによって苦しめられると、人は「どうしてそうなったのか」を自分で納得させる答えを探そうとします。
「自分には友達ができないからだ」
「そもそも〇〇出身の人が嫌いだ」
「恋愛なんて向いていないんだ」
と、あきらめたり、決めつけたりしてしまいます。
ネガティブな方向へ、理性的に考えてしまい、感情を整理させてしまうのです。
もちろん、こうした応急処置によっても心は安定します。
しかし、時間が経ってくると、理性は「このままではいけない」と考えるようになります。
そう、あくまで「応急処置は短期的なもの」なのです。
自分のことを第三者として書き出してみると、そのことがわかってきます。
そして落ち着いてきたら、やはり「理性的な自分」によって、前向きなジンクスづくりをして苦手意識と向き合っていかないといけないんですよね。
たとえば、あなたが感じている、いかなる苦手意識も、「英語への苦手意識」と同じようなものだと考えてみるとどうでしょう。
「英語が話せない」「英語が苦手だ」と、日本人の多くは考えます。
しかし、英語圏で暮らしている人は、話せるようになって当たり前です。
もし、職場に日本語が話せる英語圏の外国人がやってきたらどうでしょう。
あるいは、あなたが恋に落ちた相手がそうだったとしたら。
そうして英語で話す人を身近に感じていくうちに、「英語なんて慣れれば簡単なんだ」と、意識が変わるようになります。
苦手意識や恐怖心は、「なんとかなりそう」という思い込みがキッカケになると、どんどん克服できるようになるのです。
だからこそ、「なりたい自分を妄想してみる」ということから始めましょう。
どんなに英語が苦手でも、まずは「海外でバリバリ働いている自分」を妄想することが最初です。
今あなたの中にある苦手意識も同じです。
そのような順番で、応急処置の後に、ゆっくりと考えるようにしてみてください。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。