インド経済は一進一退でもプラス成長継続、「前年同期比」というトリックの実態Photo:PIXTA

インド経済は、前年同期比ベースの統計を見る限り、7%を超す高成長を続けている。しかし、前期比でみればマイナス成長も記録している。モディ政権は2024年の総選挙に向けて景気刺激策を講じるが、一進一退の状態といえそうだ(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

2022年は資源高、ルピー安で
インフレ率は目標を上回った

 2022年のインドは、ロシアのウクライナ侵攻を機にした商品市況の高騰や、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ルピー安に伴う輸入インフレ圧力の高まりに加え、コロナ禍一服による経済活動の正常化の進展も重なり、インフレ率が中央銀行(インド準備銀行)の定める目標を上回る水準に加速する事態に見舞われた。

 こうした事態を受けて、中銀は22年5月に緊急利上げにかじを切るとともに、その後も物価と為替の安定を目的に継続的な利上げに動き、大幅利上げを余儀なくされた。

 ロシアによるウクライナ侵攻を理由に、欧米諸国などはロシアへの経済制裁を強化した。一方、インドは原油消費量の7割を海外からの輸入に依存しており、原油高に伴うインフレを軽減すべくロシアから割安な原油輸入を急拡大させるなど「国益重視」の姿勢をみせた。

 次ページ以降、インド経済の実態を分析していく。