公道での実証は今秋からの実施を目指す

 これまで各事業者が実証実験を重ねてきたものの、日本において電動キックボードのシェアリングは「近未来の便利なサービス」としてのイメージを脱却できておらず、正式にローンチできるのか、かなり不透明な印象だ。Luup代表取締役社長兼CEOの岡井大輝氏も、まだまだ「電動キックボードの認知度は低い」と認める。

 だが、コロナ禍で三密を避けた移動が推奨されていることが、電動キックボードのシェアリング事業にとってはローンチに向けた追い風になっていると岡井氏は言う。非三密の移動手段という切り口により、今秋にも公道で実証実験を行う可能性が浮上した。6月11日に開催された、自由民主党のMaaS議員連盟によるマイクロモビリティPTでは、電動キックボードの普及に向けた規制の緩和などについての提言案が議論され、最終的には座長一任で取りまとめられることとなった。

 マイクロモビリティ推進協議会の会長を務める岡井氏のほか、mobby ride、mymerit、そして昨年11月に加わったLimeら協議会参加事業者も議論の場に加わった。岡井氏は、イギリスでは2020年2月に電動キックボードの規制緩和に向けた動きを開始すると政府から発表があり、コロナの影響を受けその取り組みが加速し、マイクロモビリティ専用のレーンを新たに整備開始していると説明。また、日本では非三密の移動手段として、シェアサイクルの通勤利用が増加していると述べた。

 提言では、電動キックボードを「いわゆる『三つの密』を避ける有効なモビリティ」とし、2020年秋頃より電動キックボード事業者が自転車レーンを含めた公道で実証実験を実施できるよう、関係省庁に要望している。電動キックボードの各事業者は政府の「新事業特例制度」を利用した実証実験が実施できることを期待している。

「去年から今年の頭にかけて、サンドボックス制度を用いた実証実験をLuupとmobby rideは行った。大学敷地内での実証実験とはいえ、道路があり、車が通る。だが、公道ではなく、私有地の中での実証実験だった。公道でどのような走行をすれば安全なのか、安全性に関するデータが取りきれていないのが現状だ。また、事業者だけで(安全性に関する)判断をするのには限界がある。関係省庁の指導のもと、規模を大きくした実証実験の実施が、今後進むべき方向だと考えている」(岡井氏)

 Luupは2020年5月、シェアサイクル「LUUP」の展開を都内で開始した。今秋からの実施を目指している実証実験は、シェアサイクルとは別軸で行うことを想定している。