そもそもb→dashは、働き方改革や生産性向上の観点から誕生したツールともいえる。短時間で最大限のパフォーマンスを発揮するには、データ活用や人工知能はもはや必須。しかし、日本にはまだ、各企業の基幹システムでデータが整理されているわけではないうえに、活用には専門知識が必要だ。そのため、データを扱おうとしても膨大な量の名寄せや変換が必要になることもあり、結果的に外注することが多い。外注すると1人月で数百万円かかるなどのコスト面での課題もあり、これまでデータ活用は大手企業でしか実現できない背景があった。

「b→dashは、Excelを使う感覚で自社データを扱えるツールです。その強みの1つが、SQLやPythonなどプログラミング知識がなくても、データを直感的に使いこなすことができる機能のData Palette。これによって、マーケターやデータアナリストが数カ月かけていた作業を、15分程度あれば完了させることが可能となったのです」(安部氏)

 b→dashは利用する機能ごとに課金を行うことで月額5万円の低価格から利用できるツールだが、400社以上ある導入企業のすべてがこのData Paletteを活用している。

「もともとツールを作るより、いかにスマートデータ社会を実現するかと考えていました。これからキーになるのはデータ。いかにデータを民主化するかが重要です。MA、BIの機能的な違いはもはやなくなってきています。(デジタルマーケティングが)うまくいくかいかないかは、データの準備ができているかどうかが差になってくると思います」(安部氏)

高額SaaSながら、高い継続率を保持

 MAツールであれば製品のリプレイスも比較的容易だが、さまざまなMAツールにつなぎ込む「基盤」となるデータ管理ツールであれば、リプレイスは難しい。安部氏も「言葉を選ばずに言えば、『はがせなくなる製品』」と自信を見せる。b→dashは月額5万円から導入できるが、導入企業の平均月額は、名刺管理サービスのSansanや、人事・労務管理サービスのSmartHRなど、同じ国産SaaSと比較しても高額だという。だが継続率は他のSaaS同様に高く、現在でも96パーセント以上を誇るという。

「本当にデータ活用できる環境をつくるには、専門知識を持った人だけでなく、アルバイトやインターンでも扱える必要があります。その先に、生産性向上がある。そういった課題を考えたときに『これはいける』と思い、2年前に開発をスタートさせたのがData Paletteです」(安部氏)