また、タクシー広告や交通広告、ネット動画広告を駆使した大型プロモーションによる効果も企業の認知や導入を高める一手となった。テレビCMなどのマス向けではなく、あえて「データを扱う担当者」を狙ったことで、企業の意思決定者層への認知が広まり、コンペ勝率が68%から90%以上になった。この数値は、今回調達を決めた投資家たちも納得させた。
採用とマーケティングを強化、「3年で600名」の規模拡大
気になるのが、調達した100億円の使いみち。この質問に対して安部氏は「採用とマーケティングの強化に活かしたい」と話す。
「タクシー広告での成果をきっかけに、他企業のデータなどを見ながら『どこに投資すると売り上げが出るのか』という自社オリジナルのマーケティングモデルをつくりました。今後は、このモデルを実現するマーケターやカスタマーサポート、セールスに注力することはもちろん、このポジションを担える人材採用も強化していくつもりです」(安部氏)
フロムスクラッチの現在の社員数は、福岡オフィスも含め約200名。今後は新卒・中卒あわせて1年後には100名、3年後には600名を新たに採用予定だという。そのほとんどが、カスタマーサポートとセールスだと安部氏は語る。これはすべて、今はまだ広まりきっていない「データ活用」という言葉が市民権を得たとき、動き出せるようにするための仕込みになる。
元社員の告発、そして労務制度の刷新
フロムスクラッチといえば、5月に元従業員がブログで「新宿労働基準監督署から賃金未払の是正勧告があった」と告発したことも記憶に新しい。その後SNSでは、「目標達成できなかった社員を丸坊主にする」「社長の家に呼び出され、テレビゲームをしている様子を見させられる」といったコメントを匿名で投稿するアカウントも現れた。
この騒動の真偽について安部氏にたずねたところ、「ブログに関しては当人がいることなので、詳細なコメントは控えさせていただきます。SNSでの誹謗中傷もありましたが、事実無根であることが多い。弁護士や専門家に相談をしていますが、あまりにも悪質なもの以外の個別対応はキリがないため、こちらも回答は控えさせていただきます」とコメントするにとどまった。
一方で、一連の騒動を受けて、(1)裁量労働制を撤廃し、原則固定労働を採用(一部保守エンジニアなどは除く)、(2)センターコントロールにより、社内PCの使用時間を8時50分~20時までに制限、(3)年次有給休暇の取得率目標を100%に設定、(4)社外監査役を設置したガバナンス強化――の4点を実施したと説明した。