スモールビジネス経営者の不安を払拭したい

 yupの創業は2019年2月。これまでにベンチャーキャピタルのインキュベイトファンドや、ヘイ代表取締役社長の佐藤裕介氏、コネヒト創業者の大湯俊介氏、スマートラウンド代表取締役社長の砂川大氏といった個人投資家から資金を調達している。

 代表取締役社長の阪井優氏は、NTTドコモで技術営業を経た後、キャッシュレス決済サービスを手がけるコイニーでの営業担当という経歴を持つ。そこで関わった人々の苦労する姿が、起業の原体験だったという。

「コイニーでやりとりした個人事業主や大学時代にバイトしていた工場などのスモールビジネス経営者を見ていると、順調に仕事を受注できている人でも資金繰りに苦労していることが多々ありました。仕事をこなしても、その報酬が振り込まれるのは翌月末、あるいは翌々月末。手元に資金がない期間が長いため、その間の生活資金や次の事業の準備を工面しづらいんです」(阪井氏)

 そんな時、アメリカで中小企業を対象にオンラインファイナンスサービスを手がける「FUNDBOX(ファンドボックス)」を知ったという。同様のサービスを日本で展開できないか。そう考えた中で生まれたのがyup先払いだ。

 筆者もフリーランスのライターとして生計を立てているが、その課題は、仕事の達成と報酬振り込み期間の「ギャップ」。周囲でもそこに悩まされているというケースは多い。結果としてフリーランスは、定期的に取引するクライアントがいなければ、毎月のキャッシュフローが大きくバラついてしまうのが実情だ。時間はかかるが報酬額が大きい大口案件を獲得したとしても、移動費などの作業経費も含めて1、2カ月後に振り込まれるため、それまでの生活費を工面しなければならない。

 特に辛いのが、フリーランスに転身した直後だ。最初の報酬が入ってくるまでの数カ月は手元に入ってくるお金がないため、独立時にはそれなりの資金を準備しなければならない。それが心配で、独立したりフリーランスになることを諦めている人も少なくないはずだ。yupの利用者は、そうした課題を持つライターやエンジニア、デザイナーなど、個人事業主やスモールチームのいわゆるクリエイティブ職が利用者の3割を占めるという。

「クリエイティブ職はもちろんですが、もっと多様な職種の方々にも利用していただければと思っています。例えば、地域の工務店やリフォーム業の方にとっては材料の仕入れのための資金繰りや、個人農家など数カ月にわたってお金が入ってこない時期がある業種の方など。先払いは、個人事業主やスモールビジネス経営者をいろんな面でサポートできると思っています」(阪井氏)