現代の資金ニーズに対応したファクタリングサービス
yupやFUNDBOXは企業や個人事業主がキャッシュを手に入れるために行う資金調達手段の1つだが、これは「ファクタリング」と呼ばれ、銀行などからお金を借りる「融資」とは区別される。融資はお金を直接借りるが、ファクタリングでは売掛債権(商品やサービスを販売した際の代金を請求する権利)をファクタリング業者に売りつけることで、将来的に振り込まれるはずのお金を早めにキャッシュにすることを指す。
近年アメリカやヨーロッパではファクタリングサービス市場が活性化しており、中でも注目を集めているのが、FUNDBOXなどのネット上でやりとりが完了するオンラインファクタリングサービスだ。日本でもスタートアップのOLTA(オルタ)の「OLTAクラウドファクタリング」やGMOクリエイターズネットワークの「FREENANCE(フリーナンス)」、マネーフォワードの「MF KESSAI アーリーペイメント」などファクタリングサービスが増えている。その背景にあるのは、「既存の融資サービスが時代の変化に追いついていないこと」だと阪井氏は考えている。
「既存の融資では、いまでも勤務先企業の社員人数や持ち家の有無など、終身雇用が当たり前とされていた頃の審査条件が重視されています。また、フリーランスへの報酬の振り込みに2カ月以上かかってしまう問題も、現行の企業体制や銀行側のAPIの都合ですぐに改善されることはないでしょう」(阪井氏)
まだまだブルーオーシャン、市場規模は10兆円にまで成長か
続々サービスが立ち上がっているとはいえ、日本ではまだファクタリングサービスが普及しているとは言い難い。阪井氏によれば、すでに米国では中小企業やフリーランスが発行する請求書のうち、約15%でファクタリングが活用されているという。さらに、FUNDBOXのCEOであるエヤル・シナー氏は米オンラインメディア・TechCrunchの取材に対して、同社が狙うマーケットは3兆ドル以上になるはずだと語っている。
一方、日本でのファクタリング利用率はまだ5%未満。しかし、フリーランスや多様な働き方に対応した資金調達手段に対する需要の増大から、ファクタリングサービスの需要は今後も高まり続けると阪井氏は考えており、「中小企業やフリーランスの市場規模から考えて、利用率が10%程度にまで成長すれば、ファクタリングの市場規模は10兆円規模になるはず」と予想する。
そんな中でyupが同業他社との差別化として重視するのは、煩雑な手続きの少なさと審査の早さだ。最短で60分、長くても90分程度の審査は、所属企業ではなくフリーランスやスモールビジネス経営者といった個人を重視した独自の与信ロジックをベースにすることで実現しているという。また、OLTAとはターゲット層が比較的近いが、両者を比較しているユーザーはあまり多くないそうだ。