米産業界の象徴が、日本の競合社によって全額現金の大幅な割高価格で買収されようとしている。米政界からはすでに非難の声が上がっているが、規制当局は反対するだろうか。これはいわば、経済不安を懐かしむ1980年代の声だ。日本製鉄が18日発表した141億ドル(約2兆円)での米鉄鋼大手USスチールの買収は、大胆ではあるが必ずしも悪い話ではない。プラス面は、気候変動に焦点を当てた米インフレ抑制法などの産業政策が、米国の鉄鋼需要にとって持続的なカンフル剤になることだ。米製造業の建設投資は2023年前半に増加した。インフレ抑制法は、多くの鉄鋼を必要とする風力発電機など数十億ドル規模のクリーン電力分野に補助金を支給する。CEICのデータによると、鉄鋼の受注残は2008年以来の高水準にある。全米自動車労働組合(UAW)のストライキが終結したことで、米国の鉄鋼価格は回復した。
日本製鉄が信じる米製造業の再興
USスチールの買収案が米政界からたたかれるのはほぼ確実だが
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