Photo by Mieko Arai
新生銀行がアキレス腱といわれたシステムの更新に向けて動き始めていることがわかった。来期から始まる中期経営計画と並行して3年スパンでの構築を目指しており、費用は現時点で、「160億~200億円を見込んでいる」(新生関係者)ようだ。
新生は公的資金を2169億円抱えており、あおぞら銀行、三井住友トラスト・ホールディングスで完済に向けた動きが出る中、明らかに取り残されている。それでも大枚を投じて次期システム構築を目指すのには理由がある。新生内部で“異常事態”が起こっているからだ。
新生の中堅幹部は、「顧客に迷惑をかけるものではないから公表していないだけで、実は多いときには毎日のようにシステム障害が起こっている」と打ち明ける。
復旧まで数十分で済むようなものばかりとはいえ、「毎日がシステム障害」は冗談では済まされない。あまりの頻度に、金融庁の担当者も報告を受けるたび、「またですか!」と、つい声を荒らげてしまうほどだという。
そのしわ寄せは、現場の行員に来ている。例えば、顧客との面談記録をシステムに入力しようとしたところ障害が発生、手書きでの対応を余儀なくされるといった具合だ。人海戦術によって埋め合わせても、そのぶん別の業務が滞ってしまう。
しかし、経営陣もただ手をこまねいていたわけではない。「こんなことは、たまにでも起こってはいけない」(新生首脳)と事の重大さは認識しており、システムの老朽化部分を新しくするなど応急処置を施したことで、最近は以前に比べ障害が減少。
昨年1月、他行宛て送金取引でシステム障害を起こしてからは、障害の発生状況や処理状況がパソコンの右下に赤字で流れるようになったため、行員が混乱せずに対応できるようにもなった。もっとも、これで障害の頻発が明るみに出て、行員の不安が増しているのだから皮肉なものである。