Photo by Ryosuke Shimizu
台湾大手の中国信託商業銀行が、第二地方銀行の東京スター銀行の買収に向けて、昨夏から主要株主との交渉を進めている。
東京スターの実質的な株主となっている、米投資ファンドのローンスターや新生銀行、仏金融機関のクレディ・アグリコルなどは、中国信託銀による買収に「おおむね前向き」(株主)だ。
株主の中には東京スターの買収を目論んでいた金融機関がいるため、反対の声が上がるリスクは残るものの、破談につながる可能性は現時点では低い。
中国信託銀は昨年末までに、東京スターの詳細な資産査定をすでに実施したとみられ、年明けには株主が集まり、提示された概算の買収価格などについて妥当性を検討する段階に入っている。
海外の銀行による初の邦銀買収案件となるため、月内にも検査に入る金融庁の動向などに注目が集まっているが、本来、目を向けるべきは依然として心もとない東京スターの経営だ。
1999年に前身の東京相和銀行が破綻して以降、数年間で株主がころころと代わり、短期的な利益を追求するファンド特有の経営に振り回されてきたのが、東京スターの歴史でもある。
今回交渉している相手は、国は違えども同じ銀行業という安心感はあるかもしれないが、2012年3月期にやっと最終損益が黒字転換した東京スターの内情を知るにつれて、中国信託銀が経営に見切りをつけ、ファンドさながらに振る舞うような「悪夢」が再来する懸念はぬぐえない。
折しも、あおぞら銀行の筆頭株主である米投資ファンドのサーベラスが保有株の売り出しを決めたように、ファンド主導による銀行再建は一つの幕を下ろしたが、閉塞感だけは残されたままだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)