インサイダー取引疑惑にシステム障害。4月1日に誕生した信託業界最大手の三井住友信託銀行は波乱含みのスタートを切ったが、週刊ダイヤモンドの取材でさらなる不祥事が発覚した。規模こそ業界トップに躍り出たが本業は課題山積。名実共に業界の盟主になれるか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子、山口圭介)
「お客さまの面談記録を勝手に変えたり、全部消したり、私が見聞きしたこととは全く違うことを記入されてますけど」
「まあ、あったか、なかったかというところを含めて、えっと、具体的に……」
「具体的になかったとおっしゃるんですか」
「いえ、あの~、変えたことは、あります」
これは、旧中央三井信託銀行(4月1日に合併して三井住友信託銀行)の都内支店における次長と契約社員のやりとりの一部だ。
本誌の調べで、旧中央三井信託の東京23区内にある支店の次長ら幹部が行内規定に違反して、リスク商品などの販売に関する業務日誌の一部について、支店にとって都合の悪い情報を担当者に無断で改ざん、消去していたことがわかった。
同行関係者によれば、この次長は支店の法令順守体制を管理する内部管理責任者。記録の改ざんは、本来ならば本部に上げるべきクレーム情報などを隠蔽するためだったとみられる。
この支店では2008年から09年ごろにかけて、幹部による改ざん行為が横行していたという。
三井住友信託は本誌の取材に対し、「この件でコメントは致しません」と回答した。