一つは品質とデザイン性だ。国産シェニール織の特徴は独自の二度織り(再織り)技術から生み出される抜群の吸水性と、表裏両面に表現される深みのある絵柄が楽しめること。さらに、「織り上がった生地を蒸し、洗い、乾燥させ、生地の毛先を両面で4回、丁寧にカットすることで生地痩せしにくい耐久性と柔らかい肌触りを実現しています」(髙橋氏)。
高い品質を担保するべく、同社では染めから織り、手作業で行う製品加工に至るまで、高野口の織物工場および国内の自社・提携工場で手がけている。
昭和レトロなデザインで
若い世代にも魅力を発信
二つ目は伝統を重んじつつ、時流を意識した企画力で斬新なデザインの商品を手がけていること。昨今の人気シリーズが、犬猫柄の「EjPetit」。ペットブームなどを受け、「『うちの子の商品が欲しい』といったお声から、犬・猫の種類のラインナップも拡大中です」と言う。
23年には、若い世代にもシェニール織のよさを知ってほしいと、日本の「Kawaii」文化の原型をつくったというクリエーター・内藤ルネの作品をモチーフにした商品も新発売。若い世代の昭和レトロブームもあって、ファン層を拡大している。
●シーエスワールド株式会社 事業内容/シェニール織製品企画販売を中心に婦人雑貨品卸売販売・小売り、従業員数/17人、所在地/東京都豊島区南池袋2‐14‐12 3階、電話/03‐5960‐4455、URL/csworld.co.jp/web
三つ目が積極的な販路の開拓だ。リアル店舗では百貨店の他、街中の洋服店、犬猫柄の人気を受け、ペットショップにも拡大。「オーナーズグッズ(飼い主のための商品)は売れない」という業界の定説を覆し、取扱店舗も増加。ネット販売も自社サイトの他に各種大手モールで広く展開している。
着実に成長を遂げる同社だが、日本のシェニール織文化の継承をミッションに「100年企業を目指す」と言う髙橋氏は、「持続的な成長を維持していくには、売り方や販売先など、常に変わっていく姿勢が大事。そのためにはこれからの時代を担う若い人材を引き入れることが喫緊の課題です」と明かす。
伝統技法に敬意を払いつつ、業界の常識にこだわらない革新的なチャレンジを続ける同社。今後の展開にも期待したい。
(「しんきん経営情報」2024年1月号掲載、協力/巣鴨信用金庫)