繊細な技法によって織り上げられるからこそのプリントでは表現できない温かみのある美しい絵柄と色彩、手に取ればふんわりと柔らかい肌触りに驚かされる。18世紀末、英国・スコットランドで生まれたシェニール織。明治初期、日本に伝わり、現在も高品質なパイル織物(有毛織物)の産地として知られる和歌山県の高野口町(現・橋本市高野口町)を中心とする産地で独自の進化を遂げる。高級織物として名を馳せるも、機械化の難しさから生産が一時、停滞したこともあった。その歴史ある日本の伝統技法を継承するため、自社ブランド「Enjeau」をはじめ、シェニール織製品の企画販売を手がけるのがシーエスワールドだ。(取材・文/大沢玲子)
同社は2000年に設立。同社代表取締役・髙橋秀明氏が前職の雑貨メーカー勤務時代、復活を遂げた高野口産のシェニール織に出会い、「その魅力を多くの人に知ってほしい、伝統ある日本製パイル産業を守りたいという使命感にも似た思いから独立を決意しました」(髙橋氏)。
染めから製品加工まで
国内生産にこだわる
当時、シェニール織といえば、海外の有名ブランドが市場を席巻。髙橋氏は海外ブランドが先行していたタオル製品ではなく、ハンカチに照準を当て、加工を手がける工場の開拓とともに、「百貨店のファッション雑貨売り場での期間限定・ポップアップストアの提案からスタートしました」(髙橋氏)。
日本ブランドの育成・支援の高まりも追い風に、独自の企画力による商品展開、地道な販路開拓により、全国の百貨店に常設売り場を広げ、存在感を増している。では、同社シェニール織製品の特徴と市場拡大のポイントはどこにあるのか。