仕事や公式の場でもつい使ってしまって、周囲に知性を疑われる言葉遣いがある――。そう指摘するのは、多摩大学名誉教授の樋口裕一氏。ワンパターンの言葉を連発したり、物事を明確にしないで曖昧にぼかすのは頭の悪い話し方だという。そこで今回は樋口氏の新刊『頭が悪くみえる日本語』(青春出版社)から、とくに頭が悪く見える日本語トップ3を抜粋して紹介します。
「めっちゃ」は語彙の貧困の表れ!
いい大人が、「めっちゃ」という言葉を公的な場で堂々と口にしているのを耳にする。
「めっちゃきれいじゃないですか」「めっちゃうれしいです」「めっちゃ面白かった」などなど。先日、テレビのニュースで火災を目撃した人が「めっちゃ火が出て」と話していた。
「めちゃくちゃ」という言葉を使う人もいる。「めちゃくちゃよかったです」「めちゃくちゃ感動しました」。この言葉は、「めっちゃ」のように省略されているわけではないので、いくらかまともな表現だ。
この言葉は、もともとは「やばい」などと同じようにマイナスの面を語るために使われていた。「滅茶苦茶」という漢字があてられ、度外れなこと、筋道が通らないことを示すのに使われていた。ところが、近年では、関西の芸人を通じて広がり、プラス面、マイナス面いずれの場合にも度合いの強さを強調するときに使われているようだ。しかも、この言葉は、「めっちゃ大きい」「めっちゃ歩く」「めっちゃ赤」というように形容詞、動詞、名詞のいずれも修飾するので使い勝手がいい。