自分でも違和感があるのに、会話でもメールでも多用してしまう「させていただく」。賛否両論あるこの言葉遣いだが、なぜこれほど使われているのか。「させていただく」増加の背景について、『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(角川新書)の著者であり、法政大学文学部教授の椎名美智氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
サウナで「整わせていただいた」が
おもしろい理由
「結婚させていただきました」「謝罪させていただきます」など、今や「させていただきます」を聞かない日はない。メールのやりとりでも「させていただく」を使用する人は多いが、使っている本人でさえ「させていただく」になんとなく違和感を抱いていることもある。文化庁が発表している『敬語の指針』でも、誤用が多い表現として紹介されているほど「させていただく」の使い方はややこしい。
正しい使い方なのか分からない、便利だが不思議な「させていただく」について、言語学の一分野である語用論の立場から研究しているのが椎名氏だ。椎名氏は「させていただく」の本来の使用法についてこう語る。