新日本酒紀行「田光」釈迦ヶ岳を背景に早川俊人さん Photo by Yohko Yamamoto

釈迦ヶ岳の麓、田光の地で米のうま味や土地を表す純米造り

 田の水面が光る様子を表す「田光(たびか)」は、鈴鹿山脈釈迦ヶ岳の麓、三重県の菰野町に実在する地名だ。町内で酒造りする早川酒造4代目の早川俊人さんは、命運を懸けた新銘柄にこの名を冠した。東京農業大学醸造学科を卒業した20歳のときから、父の俊介さんと酒造りに励んだが経営は厳しく、給料も休みもない日々を送っていた。そんな中、俊介さんの旧知の小関敏彦さん(当時、山形県工業技術センター)から、山形県の酒蔵修業の提案があった。蔵は酒田酒造で、蔵元杜氏の佐藤正一さんの繊細で丁寧、真摯な酒造りの姿勢に衝撃を受ける。見るもの聞くもの全てメモを取り、俊人さんの人生を変えた。