新日本酒紀行「紫宙」スギに囲まれた水分神社 Photo by Yohko Yamamoto

水分神社の清水で醸す、女性初の南部杜氏が腕を振るう小さな酒蔵

 樹齢700年の大スギに囲まれる岩手県紫波郡紫波町の水分神社は、水の神として知られる水分之神こと水波能売命(みづはのめのみこと)を祭る。藩政時代、盛岡藩から水源涵養林「水ノ目山」の指定を受け、スギの伐採が禁止に。そのおかげでスギ群が残って、町の指定文化財になり、豊かな清水が自噴して上水道にも使われる。この水で酒を醸すのが、蔵人4人の小さな酒蔵、紫波酒造店だ。

 杜氏の小野裕美さんいわく「不思議なことに、くみ置きしても1カ月は傷みません。軟水なのに醪(もろみ)の発酵が旺盛で、切れが良く、杜氏仲間からうらやましがられます」。小野さんは東京農業大学醸造学科を卒業後、日本酒が好きで酒造りの道へ進み、2004年、南部杜氏資格選考試験に女性で初めて合格した努力家だ。