職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
そんな悩みをズバッと解決する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんは、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介するプロです。この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「『何でもいいよ』という言葉」について紹介しましょう。
言葉の難しさ
あまり興味のない事柄や、考えるのが面倒くさいことを聞かれたとき、つい、
「何でもいいよ」
と、返事することがないでしょうか。
中には、相手の希望を尊重するあまり、自分の意見を伝えられなくて使う人もいます。
「海外在住の友人と数年ぶりに食事することになったので、何が食べたい?と聞いたら、『なんでもいい』というんだよ。じゃ、寿司屋に行こうと提案したら『寿司は昨日家族と食べた』と言う。じゃあ天ぷらは?と聞くと、『明日他の友人と食べに行く予定』だって。何でもよくないじゃない!?」
以前、こんな会話を耳にしたことがあります。
「何でもいい」は、会話を放棄しているようにも聞こえるのでしょう。
聞かされた人に、小さな不快を与える場合もあるのです。
じゃあ、どう言う?
もし自分が「何でもいいよ」と言いそうになったら、せめて選択肢を絞って伝えるように心がけましょう。
拙著『気づかいの壁』では、気づかいのコツの一つとして、「限定」という方法を紹介しています。
先ほどの「何が食べたい?」と聞かれたケースであれば、「和食が続いているから、中華なんかいいな」などと限定すれば、相手は選択しやすくなります。
何より、あなたのために素敵なレストランを見つける意欲も湧くことでしょう。
逆に、「何でもいいよ」と言われる側にまわったときはどうでしょう。
ビジネスシーンでは「何でもいいよ」まではなくても、お客さまから、「あとはお任せします」と言われることがあると思います。
そんなときも、「限定」のテクニックが有効です。
「そうしましたら、こちらの『A』か、または『B』がおすすめですが、どちらがよろしいですか?」
などと、相手の期待値を限定して尋ねてみてください。
あとになって、「何でもよくないじゃない!?」という状況を回避することができます。
(本稿は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が特別に書き下ろしたものです。)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。