コロナパンデミック以後、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学から心理学までさまざまな資料や取材をもとに、「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー、「最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を紹介する(こちらは2020年12月15日の記事の再掲載です)。
現代は「免疫力を弱める」環境
現代では、除菌・殺菌が行き届き、かつてより衛生環境がよくなりました。親の衛生意識も昔とは段違いに上がり、子どもたちは清潔な環境で安心な暮らしを送れるようになりました。
ですが、その反面、子どもたちが雑菌に触れる機会が減っていることが「免疫力」を弱める原因のひとつにもなっています。
パソコンやネット環境が進化した結果、運動不足や睡眠不足、ストレスを抱えた子どもも増えており、そうした問題も免疫力を低下させています。
免疫力を高めると、風邪などの感染症にかかりにくくなるだけでなく、血行がよくなって脳や体の動きが活発になります。
では、子どもに免疫力をつけてあげるには何ができるでしょうか?
【その1】「タンパク質」で筋肉をつける
白血球には、免疫を担当する細胞が集まっています。体温が上がると血流がよくなり、白血球が体中をめぐることで、免疫力が発揮されます。
体温を上げるには、体内に熱をつくる必要があります。筋肉はつねにエネルギーを代謝して熱をつくってくれます。ですから、タンパク質をしっかりとって筋肉をつけることが大切です。
タンパク質は、免疫細胞そのものの材料にもなります。肉や魚、牛乳や豆類をかたよらずに食べるようにします。
【その2】「いろいろなおかず」を食べさせる
腸には、体内の免疫細胞の60~70%が存在しています。発酵食品と食物繊維、オリゴ糖は免疫機能を高めてくれます。発酵食品とは、納豆や味噌、チーズ、ヨーグルトなどです。
さらに、腸内環境を整えるだけでなく、免疫細胞を活性化させる必要もあります。
免疫細胞を活性化させるには、タンパク質が必要です。ビタミン類も、細胞の免疫機能を助けますし、亜鉛などのミネラル類も、免疫細胞を保護するために必要です。
このように、免疫力には多くの栄養素が関わっていますが、毎食複雑な栄養計算をしなくても、「主食:主菜:副菜=3:1:2」の割合でいろいろな種類のおかずを食べたり、「旬の食材」を意識したりすることで、自然にバランスがとれます。
【その3】「日光」を浴びる機会を与える
コロナ禍のいま、外遊びの機会が減っていますが、太陽に当たらないのも子どもにとって大きな問題があります。
紫外線を浴びることで人間がみずから合成できるビタミンが「ビタミンD」です。ビタミンDは、がんや自己免疫疾患、感染症の発症予防に関係しています。
東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授らの研究によると、インフルエンザがはやりだす前からビタミンDを意識してとっていたら、発症率が半減したといいます。ビタミンDはサバなどの魚類やしいたけなどのキノコ類に含まれるものの、食べ物だけでは不十分です。
紫外線=悪とみなされがちですが、紫外線の強い時間帯に肌の極端な露出を避ければ、30分程度の散歩をするだけでも多くのビタミンDが合成され、免疫力を高められます。
【その4】「十分な睡眠」をとらせる
睡眠不足は免疫力を低下させます。早稲田大学人間科学部の前橋明教授によると、たくさん体を動かし、睡眠のリズムが整えば、自律神経の働きがよくなって、低体温などの体温異常が減少するといいます。
しっかりと体を動かして、たっぷりと睡眠をとることで体温が安定し、免疫力が高まります。
(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』からの抜粋です)
藤田紘一郎『子どもの免疫力を高める方法』(ロング新書)
井手ゆきえ「日光浴が免疫力を活性化 脚光浴びるビタミンD」(ダイヤモンドオンライン、2012/6/11)
前橋明「幼児の生活リズムの乱れの実態と改善のための方策 ──『休養』『栄養』『運動』のバランスの回復を」(「BERD」16号、2009/3/31)
有限会社スタジオ食代表/管理栄養士、牧野直子氏