つまり、6時間程度の睡眠時間の人は、毎日徹夜している人と同じ程度のパフォーマンスしか発揮できていないということになります。パフォーマンスには、集中力や判断力、記憶力、論理的推論能力のほか、気分や感情などあらゆる脳機能が含まれます。

 人に差をつけられたくなかったら、一番必要な明日の準備は寝ること。睡眠時間をしっかりとること。明日が大事な日ならなおさらです。夜の睡眠が、明日のあなたの一番の味方です。

睡眠不足により発生する
経済損失は年間15兆円

 ヘルスケア商品や医療関連機器を中心に取り扱うオランダ・フィリップ社の世界睡眠調査によれば、日本で睡眠に満足している人は29%だそうです。この調査は13カ国を対象に実施されたもので、日本の満足度は最下位でした。

 さらには、こんなデータもあります。

● 日本の睡眠不足による欠勤時間は年間約480万時間

● 睡眠時間4時間未満の交通事故発生率は4.3倍(適切とされる7時間以上の睡眠時と比較して)

 慢性的な睡眠不足によって発生する経済損失は年間15兆円ともいわれています。こうなるともはや、睡眠不足は自分ひとりの問題ではありません。国を揺るがす大問題ともいえます。

 けれど、こうやってデータを示されたとしても、日本の経済が睡眠不足のせいで圧迫されているという実感を持つ人は少ないはずです。これは個人の睡眠不足の問題と似ています。

 ずっとそうしてきて、それが当たり前になっているから気づかない。自分の睡眠が変わったとき、自分がどうなるか。日本人全員がそうなったとき、社会がどうなるか、知らないからわからないのです。

 ニュースで見る悲惨な事故が、睡眠によって防げたかもしれない。今朝の通勤電車の遅延が起きなかったかもしれない。あの人がもっと寝ていたら認知症にならなかったかもしれない。がんにならなかったかもしれない。

 それは夢想の世界ではなく、極めて現実化する可能性の高いパラレルワールドなのです。