快適な眠りを手に入れるのは意外と簡単で、それは就寝前に「絶対にやってはいけないこと」を守るだけ。自らも睡眠障害に悩まされてきた脳内科医が安眠に効果的な方法と今すぐやめるべき不眠習慣を提言する。本稿は、加藤俊徳『中高年が朝までぐっすり眠れる方法』(アチーブメント出版)の一部を抜粋・編集したものです。
毎朝必ず同じ時間に
起きることが重要
これまで私自身が取り組んで特に効果があった方法と、不眠を主訴に外来を訪れた患者さんに伝えてきた認知行動療法を3つご紹介します。
朝、早く起きるためには、夜早く寝ることが大切です。当然のことなのに、できないのが不眠中毒です。朝時間を活用するといった内容の本でも、夜だらだら起きていないで、「決まった時刻に寝ましょう」と書かれています。もちろんそれで早寝早起きの習慣がつくなら誰も苦労はしません。正しくは、「同じ時刻に起きましょう」。このことのほうが非常に重要です。
私たちの細胞は、それぞれ時計を持っています。いわゆる体内時計です。各細胞の時計がばらばらに動くと困りますから、「脳幹」にあるマスター時計が体内のリズムを司っています。これが「概日リズム」と呼ばれるものです。
概日リズムのおかげで、朝は脳内にドーパミンなどのホルモン物質が分泌され、覚醒や活動を促します。そして、夕方からは眠りに誘うメラトニンが分泌され、体を休めるモードになります。私たちが意識することなく、体の中で毎日、自然に行われています。
概日リズムは、約25時間サイクルで動いています。1日は24時間なので、少しずつズレが生じます。そのズレを修正するのが日光です。人間は朝、日光を浴びることで、体内時計の時間を合わせています。そのため、朝起きたら最初にすべきことは日光を浴びること。雨が降っていても、光を浴びることが大切です。
日光を浴びて時計の狂いを修正できるなら、なにもわざわざ起きる時刻を同じにしなくてもいいのではないか。そう思われるかもしれません。いいえ、それは違います。
日光を浴びて整えられるのは、あくまで地球の24時間と概日リズムの間の1時間のズレです。視覚からの光刺激によって幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンが分泌されます。それから14~16時間後にセロトニンは睡眠ホルモン「メラトニン」に変換されます。起床時刻が良い睡眠を左右します。
朝起きる時間を変えないことは、質の高い睡眠を得るために重要な要素です。
平日は7時間半も睡眠時間がとれないので、休日は朝寝坊をして、睡眠不足を補う人も多いでしょう。慢性的な寝不足を少しでも解消するという意味では、その調整が悪いとはいいません。