専門医「睡眠は長さより質?大間違いだ!」寝不足のせいで発達障害・認知症に悪影響も?写真はイメージです Photo:PIXTA

睡眠の役割は脳や心身を休ませるだけでなく、脳の老廃物を排出することも含まれる。それゆえ、睡眠が足りていないと発達障害や認知症にも悪影響を及ぼすという。睡眠不足が生み出すデメリットは計り知れない――。本稿は、加藤俊徳『中高年が朝までぐっすり眠れる方法』(アチーブメント出版)の一部を抜粋・編集したものです。

睡眠の改善はADHDの
症状の多くを軽減する

 私は子どもの頃から、仰向けになると日中でも息苦しくなることに悩まされてきました。そこで、30歳後半に自分の口腔と頸部のMRIを撮影してみました。すると、扁桃腺自体は大きくないにもかかわらず、両側の扁桃腺と口蓋垂に挟まれて気道の直径がおよそ5ミリメートルと通常の半分ほどになっていることが判明しました。

 そこで、専門医にお願いして、両側扁桃腺を摘出しました。それまでは、日中に頭に黒幕が張っているような状態が多く「自分の精神はおかしい?」と疑っていたのですが、術後、頭がすっきり晴れやかになり、これが原因だと判明しました。

 さらに睡眠と脳の仕組みを追求していくうちに、睡眠が発達障害の患者さんにも重要であることがわかってきました。

 私のクリニックでは、ADHD(注意欠陥多動性障害)専門外来をしています。ADHDの方にとって、肥満と睡眠障害は天敵です。肥満と睡眠障害を改善すれば、ADHDの症状のおよそ5割は軽減するといっても過言ではないのです。

 睡眠の特に重要な役割を改めてまとめます。

○ 脳や心身を休ませる
○ 記憶を整理させ、定着させる
○ 脳の老廃物を排出する
○ ホルモンバランスや免疫を整える

 睡眠が足りなかったり乱れていて、十分な休息をとらずに活動を続けていると、動いているようでもパフォーマンスは低下します。ミスや事故につながることもあるでしょう。記憶の整理や定着がうまくいかないと、物忘れやうっかりミスの原因になります。さらに脳の老廃物の排出ができなければ、認知症の要因にもなります。

 ホルモンは睡眠に深い関わりを持ちます。女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンには、上気道の拡張作用があり、睡眠時無呼吸やいびきを軽減する作用があります。また、寝ている間に活発に生まれる成長ホルモンは代謝を整え、筋肉や骨を強くします。生活習慣病との関連も深く、肌の水分調整などにもホルモンが作用します。