ビジネスの世界を制する4つの武器

大石 利益さえ出れば、信用できない企業にも売ってしまうということなんですね……。個人的なイメージでは、プライベート・エクイティ・ファンド(PE)は社会貢献の度合いが強いのではないかと思っていました。製造業で経営が立ち行かなくなったところを買って、企業価値を高めて、結局は売却するんですけど、その過程で日本企業の再生に貢献しているのではないかと。でも山口さんのお話をお聞きしていると、本にも書かれていましたが、やはり利潤追求のスタンスがやはり強いんですね。

山口 そうですね。必ずしもすべてのPEがそうだとは思いませんが、前回お話ししたお金と愛を軸にしたポジションで見ると、なかには愛の座標が低い場所に位置しているものもあると思います。高いリターンを投資家に求められていますからね。年金や海外マネーの投資家にとっては、そのホテルが豊かであるかどうかなんて、どうでもいいことなのです。100億円出したんだから、200億円で返してね−−−それが本質的な動機になることも。お金から始まれば、お金に戻らざるを得ないんですよ。

 一方、篤志家ではないのでもちろん経済的なリターンも多少は考えていますが、言語化できない価値に対してお金を出す「ソーシャル・ファンディング」というポジションがあります。金銭的なリターンではなく「思い」にコミットする金融の流れもあるので、そういうポジションにいるオーナーに認められることが近道だと思いますね。

大石 そうですね。

山口 お金持ちになるためには、お金を制する必要があります。お金を制するために大事なのが「ココロ」なんですね。ビジネスの世界では「カミ(紙)」「コネ(コネクション)」「カネ」「ココロ」という順で強さが増していくという法則があります。カミは知恵のことを意味します。具体的には、分析や戦略、プレゼン、知識などのことです。コネは、顧客や取引先との関係を指します。カネというのは、お金を持っている人が、カミやコネよりもさらに強いことを意味します。僕も一時期お金の世界にいましたが、カネが人を動かすことができる強さを実感しました。

 でも、お金は結局、ココロからしか入ってきません。この世界はお金と愛でできているので、ココロをわかっている人が、ただ単にお金を持っている人より強いわけです。こういう人が、ものすごい大金を手にするケースが多い。もちろん、ココロを持っていなくても大金を手にする人がいないわけではありません。でも彼らは、決してハッピーではないと思います。なぜなら、幸福は他者との一体性のなかにしか存在しないので、ココロが足りない人には感じることができないからです。

大石 それはよくわかりますね。

山口 幸せ感や豊かさオーラが出ていないんですね。もちろん、そういう人を批判するわけではありませんが。