多くの書店でベストセラーのランキング入りしている『媚びない人生』のジョン・キム氏。韓国に生まれて日本、アジア、アメリカ、ヨーロッパ等3大陸5ヵ国を渡り歩き、使う言葉も専門性も変えていった著者が今回著したのは、ゼミの最終講義で卒業生に送ってきた言葉をベースにした人生論だった。今回は、レバレッジシリーズなどで著書累計200万部を突破、『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』も話題の本田直之氏との対談をお届けします。今、2人が若者に伝えたいメッセージとは。
(取材・構成/上阪徹 撮影/小原孝博)
それでいいんだよ、と言ってくれる本
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活するデュアルライフを送っている。著書に、ベストセラーになったレバレッジシリーズをはじめ、『ノマドライフ』(朝日新聞出版)、25万部を超えるベストセラーとなった『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』『ゆるい生き方』『7つの制約にしばられない生き方』(以上、大和書房)『ハワイが教えてくれたこと。』(イースト・プレス)などがある。著書は累計200万部を突破し、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。
本田 『媚びない人生』を拝見して、久しぶりにすごい本に出会ったと思いました。線を引いて、メモを書きながら読んでいたら、半分以上に“ドッグイヤー”が付いてしまって(笑)。この本は読んだほうがいい、とたくさんの友達に配っています。
キム ありがとうございます。
本田 今は変化の激しい時代。過去の常識にとらわれるな、なんてことが言われていますよね。でも実際には、親や上司や先生から飛んでくるのは、過去の常識や過去の指針だったりするわけです。
じゃあ、どうすればいいんだ、何を指針にしていけばいいんだ、と悩んでいる人はとても多いと思う。この本は、そうした新しい価値観に向き合うときに、何が必要なのかを示唆してくれる本だと僕は感じました。
キム 日本には、ほとんどの人が共有する特定の価値観が過去にはありましたよね。言ってみれば、ひとつの山にいかに早く高く登るか、という発想で良かった。ある意味、進むべきレールがあったんです。だから、自分の人生や、自分自身と真剣に向き合う必要性は必ずしもなかった。
ところが今は、そのレールがなくなってしまっている。幸福というものを、人それぞれが自分で規定しなければいけなくなっています。
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任准教授。韓国生まれ。日本に国費留学。米インディアナ大学博士課程単位取得退学。中央大学博士号取得(総合政策博士)。2004年より、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構助教授、2009年より現職。英オックスフォード大学客員上席研究員、ドイツ連邦防衛大学研究員(ポスドク)、ハーバード大学法科大学院visiting scholar等を歴任。アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、3大陸5ヵ国を渡り歩いた経験から生まれた独自の哲学と生き方論が支持を集める。本書は、著者が家族同様に大切な存在と考えるゼミ生の卒業へのはなむけとして毎年語っている、キムゼミ最終講義『贈る言葉』が原点となっている。この『贈る言葉』とは、将来に対する漠然とした不安を抱くゼミ生達が、今この瞬間から内面的な革命を起こし、人生を支える真の自由を手に入れるための考え方や行動指針を提示したものである。
本田 逆にそのことに気づいていた若い人も多いと思うんです。自分で新しいレールを考えて、自分なりの道を進めばいいんじゃないか、と。ところが、まわりの反応を見て、「ああ、やっぱり自分が間違っていたのかな」「これではないのかな」と思ってしまっていた人も多かった。でも、キムさんの本は「いや、君たちはそれでいんだよ」「それを信じて進んで行け」と言ってくれている。『媚びない人生』は、若い人にものすごく強い、大きな応援になると思いました。
信じているものがブレてしまいそうになりがちな不安定な時代。どっちに行けばいいのかわからない時代に、大きな光で照らしてくれた。だから、たくさんの人に支持されているんだと思う。
キム 自分自身の幸福感や価値観を、自分で設定する。これまでそういう習慣のなかった個人には、これは難しいことと思うんです。だから、そのときに考慮しなければいけない要素をリストとして並べて、思考の材料、思考の方法を提供したいと思いました。『媚びない人生』は、自分なりの幸福感や未来の価値観を自分で設定していく際の、ひとつの方法論的な材料になれたのかもしれません。
本田 実のところ、10年前にこの本が出ていたら、まだほとんどの人が理解できなかったと思いますね。