言語化できない位置づけにある「真の超一流」を目指せ

山口 大石さんのような人が、既存の組織のオペレーションに埋没してしまうのはもったいないかもしれません。

大石 どういうことですか。

山口 もちろん、商社や投資銀行は、収益力や就職人気でトップ級です。でも、いまやすでに確立された「コモディティ」の世界のトップなんですね。たとえばスタンフォード大学出身者の上位5%は必ず起業するといわれているように、本当の超一流は確立されていない言語化できない価値観のなかで仕事や暮らしを選択します。確立されたコモディティのトップにいくことも悪いわけではありませんが……。

大石 ただ、その前段階として、クレジットを高める意味で、信用された名だたる大企業に入るという方法を選択している人が多い気もします。

山口 それも正しい考え方だと思います。

大石 大企業に入って、歯車のひとつとして自分の役割を果たして目標を達成していく人がいる一方で、常に起業の機会を狙っている人もいます。こうした価値観の差もあるのではないでしょうか。実際、起業を含めて何かにチャレンジするのは、かなり大変なことだと思います。体力、気力、精神力、やってやろうとする気持ちが不可欠ですよね。そういうのを面倒くさいと感じ、組織という大きな流れに組み込まれていたほうが楽だという人もいると思うんですね。そっちのほうが自分は幸せだと。私はそれぞれが一番幸せだと思う生き方を選ぶべきだと思います。

 ただ、大企業の既得権益的な大きな流れに乗っているだけならまだしも、大企業に所属していることを自分の能力と勘違いし、その状況を誇示する人は理解できません。自分が何をしているかでなく、会社名だけにプライドを持っている人にお会いすることが多くありました。たぶん、クレジットの中には、その人の持っている雰囲気や精神的なものではなく、どちらかというと肩書きに近いものもあります。本を読むときに作者の経歴を見て「この人の言うことだから信用できそう」と思うのと一緒だと思うんです。

山口 たしかにそうですね。特に突拍子もないことを言うときには、その人が社会的に積み上げてきた信頼性は大事です。

日本では、実際の価値より遅れて信用がついてくる

 本にも書きましたが、特に日本の場合は今現在生み出しているバリュー(価値)よりも、すでに構築されたクレジットを重視する社会です。バリューを産み出すピークを過ぎていても、そのバリューが蓄積されることでクレジット(信用)は遅れてピークを迎えます。つまり、すでにバリューはなくなっているのに、クレジットが高いという状態が生まれてしまうのです。しかし、ファイナンスがつくか否かはクレジットに左右されるので、バリューを今出しているベンチャー企業より、実態は死に体でも既存の大企業に莫大な資金を供給しようという発想が出てくるのです。

 日本は、基本的には封建国家です。封建国家は、基本的にクレジット社会です。バリューを出している経営者でも、クレジットが溜まっていなければファイナンスはつきません。クレジットが貯まって初めて、社会的に評価される仕組みです。そういう割り切りのもとに、コモディティ化された世界の頂点を目指す意味はすごくよくわかります。しかし、繰り返しになりますが、お金を持っていても、ココロもわかっている人に惚れたほうがいい。そのほうが、長い目で見て強いと思います。

(次回は4月3日更新予定です。)


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