植田日銀総裁Photo:Bloomberg/gettyimages

利上げは決算の3月期末月でも可能

「マイナス金利解除の時期は近づいており、次回3月会合から“ライブ”になる」

 24年1月の金融政策決定会合後に日本銀行が発したメッセージを、筆者は総合してそう解釈している。同解除決定の確率は現時点で3月が40%、4月が60%と見ている。

 決算期末月である3月に引き締め方向の政策変更を行えるのか?と思うかもしれない。が、前回、量的緩和解除が決定されたのは2006年3月9日だ。要は、日銀が掲げてきた経済情勢の解除条件が整うか否かがポイントになる。

 今回の場合、日銀は「賃金上昇と物価上昇の好循環」により、持続的・安定的なインフレ目標2%の実現の確度が上がってくることが必要だとしている。そのために日銀は今年の春闘で賃上げが進み、中小企業にもそれがある程度波及していくことが予想され、賃上げが物価を押し上げる流れが定着することを期待している。

 賃金のデータを慎重に集めるのなら4月会合で解除だろう。一方、3月会合までに春闘の好調さが方向性として明らかになり、能登半島地震が及ぼす日本経済への影響は限定的と判断され、かつ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げに関する市場の織り込みが一層後退して円安が進めば、3月の確率が高まってくる。

 ただし、今年3月の日銀決定会合最終日は19日だ。2006年よりも3月末に10日近い。3月に決める場合は、日銀は事前に市場にある程度なじませておくべきだろう。

 ではその際、YCC(イールドカーブ・コントロール、10年国債金利誘導)は撤廃されるのか? オーバーシュート・コミットメントやリスク性資産の行方を考えよう。