米国経済は減速に向かうも
消費に支えられて軟着陸へ
米国経済への楽観論は根強いが、これまでの金融引締めが効いてくるために年前半の景気減速は避けられない。早めに利下げに転じても、効果が出始めるのは少なくとも半年は先だ。
ただ、良い知らせは年前半の調整が深刻なものにならず、年後半には緩やかながらも回復基調に戻りそうなことだ。米国経済が軟着陸(ソフトランディング)する可能性は高まっている。
軟着陸を可能にするのは個人消費の底堅さだ。一方で、既に弱っている住宅投資に加えて、金利に敏感な設備投資といった需要項目の回復は当面、期待出来ない。
消費の減速が限定的となるのは、インフレによる所得の目減りを勘案した家計の実質賃金が底堅い伸びを維持すると見込まれるためだ。インフレが順調に低下を続ける一方、名目でみた賃金所得はインフレに負けない伸びを維持し続ける(図表1)。
名目賃金所得が伸び続けるのは一人当たり賃金の上昇が原動力となる。経済全体の賃金所得は「一人当たり賃金×雇用者数」で決まるが、景気鈍化で雇用者数の伸びはさすがに期待出来ない。
このように底堅い賃金の伸びを背景に経済が軟着陸する可能性が高まっていることは、市場が注目する米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げのペースにとっても大きなインプリケーションを持つ。