2024年のFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ幅についてFOMC(米連邦公開市場委員会)のドットチャートでは0.75%。市場はそれ以上の利下げ幅を織り込もうとし、10年債金利は低下するが、そのたびにFOMCメンバーのけん制発言などで再び上昇することを繰り返している。実際に、利下げ時期や水準がどうなるのかを検証してみた。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
早期利下げを織り込む市場を
けん制するFRB当局者
2023年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では23年での利上げの終了が示唆され、24年に0.75%(3回)程度の利下げが行われる旨のドットチャート(メンバーによるフェデラルファンド金利=FF金利の見通し)が示されたが、市場参加者が注目したのはドットチャートではなく、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の発言であった。
パウエル議長は「2%のインフレ達成からかなり前に景気抑制を減らしたい」と発言したのだが、これがソフトランディングに向けた強い意思表示と受け止められ、景気が明確に減速する前の段階で「予防的」に利下げを行うことが重要との見解と市場に受け止められた。
これを受け、米国10年債利回りは3.7%台まで低下したのだが、市場のフライング気味の利下げ織り込みに対し、23年末から24年初にかけて、これをけん制する当局者発言が相次いだ。
1月17日にはFRBのウォラー理事が「迅速に利下げしたり急いだりする理由はない」と発言し、早ければ24年3月に着手されるとの織り込みがなされていた利下げへの期待が大きく剥落。米国10年債利回りも4.15%まで上昇してしまった。
24年から利下げが始まるとのコンセンサスに相違はないといえるのだが、市場では何が利下げのトリガーになるのか、あるいは何が利下げの根拠になるのかについてのコンセンサスが形成されていない。
「消費者物価の伸びが2%に鈍化すれば利下げ」であれば分かりやすいのだが、パウエル議長は「2%のインフレ達成からかなり前に」利下げが可能としている。結局、FRB、そしてパウエル議長は何を意図しているのであろうか。そして、利下げはいつ開始され、FF金利はどこまで引き下げられるのだろうか。
次ページ以降、パウエル議長の発言、ドットチャートなどを分析しつつ予測していきたい。