「トヨタを立ち上がらせるのに精一杯だった」グループ企業で不正続発、豊田章男会長の反省の弁相次ぐトヨタグループの不正発覚を受けて、豊田章男会長は責任者としてグループの変革に取り組むことを宣言した Photo: Getty/Bloomberg

トヨタグループの一連の不正で
新ビジョンを策定

 トヨタ自動車は、1月30日に名古屋のトヨタ産業技術記念館で「トヨタグループビジョン説明会」を行い、豊田章男会長が会見に臨んだ。これは、日野自動車・豊田自動織機・ダイハツ工業とトヨタグループ各社の不正が連鎖したことに対応したもので、豊田会長は改めて深く陳謝した。

 会見の場で、豊田会長は「トヨタ創業の原点を見失った」とし、新たなグループビジョンを「次の道を発明しよう」と定め、トヨタグループ全体で共有することを発表した。

 新ビジョンの背景として、豊田会長は、トヨタグループの原点は「多くの人を幸せにするためにもっといいモノをつくること」、すなわち「発明」にあるとし、「発明の心と向き合い、誰かを思い、技を磨き、正しいモノづくりを重ねる。互いに『ありがとう』と言い合える風土を築き、未来に必要とされるトヨタグループになる」と説明した。

 この会見に先立ち、トヨタグループの原点である産業技術記念館にグループ17社の会長・社長と現場リーダーを集め、トヨタグループの進むべき方向を示した「新ビジョン」と「心構え」を全員で共有したことも報告した。また、豊田会長は「今日から私自身が責任者として、グループの変革をリードしていく」と、トヨタグループ全体責任者としての立場を明確にして改革に取り組んでいくことを宣言した。

 1月30日に豊田会長による「トヨタグループビジョン説明会」を開くことはトヨタから事前に予告されていたのだが、豊田自動織機の会見が前日にあったことから実際には“謝罪会見”となるとみられており、豊田会長がどのような言葉を紡ぐのかが注目されていた。

 だが、実際にトヨタがグループ新ビジョンを公表したことに対し、筆者がやや違和感をもったのは、トヨタグループにはすでに行動指針として「豊田綱領」がある点だ。豊田綱領は、トヨタの始祖であり豊田会長の曾祖父にあたる豊田佐吉氏の遺訓で、トヨタおよびグループ各社に浸透してきたものだ。「常に時流に先んずべし」のフレーズが有名だが、最初の一文は「上下一致、至誠業務に服し」とある。トヨタの中核であるグループ17社には、この豊田綱領を今一度、徹底させればいいのではないか。