ダイハツの驚くべき不正が明らかに
全車種出荷停止の異常事態
年末の自動車業界は、カー・オブ・ザ・イヤーの話題と、年明けの初売りによる拡販に向けた新車発表などのイベントで盛り上がるのが通例だ。ところが、今年2023年の年末は、例年の年越しとはかなり様相が異なる。
12月20日にダイハツ工業が新車の安全性が国の基準に達しているか確認する認証試験で不正をしていた問題を国土交通省に報告し、この問題を調査した第三者委員会と、これに続きダイハツ・トヨタ自動車の首脳らが緊急会見を行った。
ただし、ダイハツ・トヨタの共同会見といっても、実際はダイハツを完全子会社とするトヨタの仕切りだった。会場がトヨタ東京本社に隣接するイベント会場であり、司会もトヨタの“スポークスマン”の長田准執行役員・渉外広報本部長自らが務めたのだ。だが、トヨタが仕切った会見なのに、豊田章男会長、佐藤恒治社長の姿がなかったことに違和感を感じたのは、筆者だけではないだろう。
ともあれ会見の結果、12月26日からダイハツが生産する全車種の出荷・生産を停止するという、前代未聞の事態が生じた。
そもそも、この一連の事件は、23年4月に側面衝突試験の認証申請における不正があったとダイハツが公表したのが端緒だった。これを受けてダイハツの奥平総一郎社長が会見で謝罪するとともに、親会社のトヨタの豊田章男会長と佐藤恒治社長も別に緊急会見を行い、豊田章男会長は「ダイハツだけの問題でなく、トヨタの問題でもある。グループ全体で個社の社内風土を変えるまでに至らなかった」と謝罪、トヨタグループとしての問題意識に言及した。
ところが、最初は東南アジアなどへの海外車種が不正の対象とされたものの、それから1カ月足らずの5月には、国内で販売するダイハツの「ロッキー」とトヨタにOEM供給する「ライズ」のHV車でも不正があったことを新たに発表した。
ダイハツは、「この度の不正は車の安全性に関わる領域での不正であり、社会的に許されるものではない。経営マネジメントが現場に寄り添えず、法令遵守や健全な企業風土の情勢が疎(おろそ)かになる中で、正しいクルマつくりを見失い不正行為を発生させた」と謝罪。「不正行為をせざるを得なくなった背景・環境・真因を徹底的に究明し、改善・再発防止に取り組み、膿(うみ)を出し切る」として、外部の「第三者委員会」による内部調査を進めてきた。
それから半年を経過した今回、その第三者委員会の報告書が公表されたわけだが、そこで明らかになったのは、非常に驚くべき内容だった。