発展の礎を築いた名君

島津家も島津四兄弟(義久・義弘・歳久・家久)が歴史好きに愛されていますが、父の貴久、祖父の忠良の名君ぶりが光ります。

彼らが島津家発展の礎を築いたからこそ、後の世代に英雄が生まれているともいえます。伊達輝宗や島津貴久、祖父を主人公にした作品を私は読んだ記憶がありません。

それだけ歴史的にはマイナーな人物であり、小説には描きにくいのでしょう。

英雄を作った
影の立役者を知る

島津四兄弟を扱ったものとしては、『衝天の剣―島津義弘伝』『回天の剣―島津義弘伝』(天野純希 著)があり、伊達政宗を主人公にした作品には『馬上少年過ぐ』(司馬遼太郎 著)や『伊達政宗』(山岡荘八 著)があります。

また、『捨て子童子・松平忠輝』(隆慶一郎 著)は、家康の六男である松平忠輝を描いていますが、忠輝の妻の父親が政宗というつながりがあり、政宗が娘婿をどのように扱っていたかがわかります。

これらの作品を読んで、英雄の活躍だけに注目するのではなく、英雄を作った影の立役者がいたことも知ってほしいと思います。

急死した上杉謙信の
後継者争い

もう一つ、現代にも通じそうな例をお話ししておきましょう。上杉謙信は戦の準備をしているときに城内で倒れ、49歳で急死しています。

死因は脳溢血(のういっけつ)などとされていますが、このとき謙信は跡継ぎを正式に決めていなかったので、上杉家では後継者争いが勃発。

一歩誤れば、家ごと完全消滅していた可能性もありました。

承継に失敗した
組織は潰れる

これを聞いて身につまされる経営者もいるのではないでしょうか。

今は戦国時代と違って戦で死なないから安心と思っているかもしれませんが、現代人も交通事故や病気で急に命を落とすリスクは十分にあります。

やはり「自分はまだまだやれる」と思っていても、経営者は早め早めに手を打っておくべきです。

経営の戦略や戦術は無数にありますし、簡単に他に応用できないこともあります。しかし、「承継に失敗した組織は潰れる」というのは時代を超えた真理なのです。

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。