「こんなに利益が出たのに、手元に残るお金はわずか」
経営者なら、誰しも一度はこう思うはずです。だからといって、小手先の節税に躍起になってはいけません。会社のお金を1円でも多く残し、そのお金を会社の投資にまわし、会社をより成長させる。それこそが経営者の仕事です。
本連載は、「1円でも多く会社と社長個人にお金を残す方法」を学ぶものです。著者は、財務コンサルタントの長谷川桂介氏と公認会計士・税理士の黒瀧泰介氏です。インボイス制度、各種法律に完全対応の『今日もガッチリ資産防衛――1円でも多く「会社と社長個人」にお金を残す方法』の著者でもあります。経営者の超リアルなお金の悩みに対し、あますところなく解決策を提示した1冊になっています。

仕事で使うスーツは「経費」で落ちる? 落ちない?Photo: Adobe Stock

スーツは経費で落ちる? 落ちない?

 スーツやカバン、靴などは、たとえ仕事で使うものであっても、原則、経費にすることができません。

 社長や役員であっても、くくりとしては「給与所得者」になります。給与所得者はみな給与所得控除を受けられます。これはいわば、会社員の「必要経費枠」です。収入に応じて一定額が給与から控除され、その額は最低でも55万円、上限は195万円となります。仕事で使うスーツ、カバンなども、この範囲で買ってください、ということになっています。

「給与から控除される」とは、イメージとしては「経費として使える額が、あらかじめ給与から差し引かれている」ものとお考えください。つまり、会社から給与をもらった段階でもう、スーツ代を含めて「最低でも55万円、上限は195万円」は経費として計上されているようなものなのです。新たにスーツ代を経費として計上すると、それは「二重計上」になってしまうということです。

 ただ、「これは経費に入れていいの? ダメなの?」と迷ったり、「当然、経費に入れていいだろう」と処理したものの、後から税務署に指摘されて除外されたり、といった状況に直面している社長さんは多くいます。

「これ」は経費で落ちません!

 また、中には、「そんなの、経費として認められるわけないじゃないですか!」と思うようなものまで、経費として処理しようとする人もいます。具体的には、愛人へのプレゼントや、趣味で使うゴルフセットの領収書を、あたかも仕事で使った経費のように申告していた例を聞いたことがあります。いずれも、のちに税務署の指摘で見つかってしまったのですが……。

 税務署は侮れません。まずは、「社長は、なんでもかんでも経費として会社のお金を使える」という根本的な誤解をしないよう、まずは「そもそも、経費とは何なのか」から確認していきましょう。

(本原稿は『今日もガッチリ資産防衛――1円でも多く「会社と社長個人」にお金を残す方法』から一部抜粋、追加加筆したものです)