入社して最初に教えられたのが
「歯車の一つになりなさい」でした(山田)
山田 僕が新卒で入った会社で最初に教えられたのは、「歯車の一つになりなさい」ということでした。部長が、「社長も社員も歯車。みんなで歯車を回しましょう」と言っていたんです。これは「みんな平等だよ」というメッセージだったのだと思いますし、当時はそんなにネガティブにとらえてはいませんでしたが、歯車というのはやはり夢がない。「どこまで頑張っても自分は歯車なのか」という気がしてしまいます。本当は、会社の中でもクリエイティブな仕事はできるはずなのに……。
ひふみ投信:http://www.rheos.jp/ Twitterアカウント:twitter@fu4
藤野 僕は大学の講義に、いろいろな企業経営者を呼んで学生の前で若い頃の話をしてもらっているのですが、彼らの話を聞いていると、上司の言うことを粛々と聞いていた“いい子”が一人もいない。
サラリーマンで出世した人は、上司と戦ったとかストをやったとか、どこかで会社に刃向かってきたという人が多いんですよね。学生にしてみれば、これは結構ショックな話でしょう。彼らは、社会人になって社長になるような人は「上司の言うことを素直に聞くタイプ」だとイメージしているのに、実は自分の考えを突き詰める人こそ社長になっていることに気づくわけです。
山田 学校の世界では、生徒会長になるのは“いい子”ですからね。会社とは絶対的な違いがあるのに、学生時代の延長で企業社会をイメージしていると、現実とズレが生じてしまう。
藤野 学生時代と社会人とで大きく違うのは、初めて「お客様」という第三者が出てくることです。学生時代はお客様がいなくて、閉じた世界の中、試験の結果だけで評価されます。ところが社会に出ると、お客様視点、第三者視点で評価を受けることになるわけです。その劇的な違いを知らないまま卒業していく学生が非常に多いと思います。
山田 その「第三者視点による評価」を数値化したものがお金なんですよね。学校や塾でならお金のことに触れずにすみますが、社会人になったらお金の話から逃れることはできません。
藤野 社会ではテストの点数を取れる“いい子”がお金持ちになれるわけではありませんからね。評価の軸がいきなり変わって、高得点を取った人ではなく「付加価値を生み出した人」「儲けた人」が偉いということになる。
そうすると、“いい子”はお金そのものを否定したくなるわけです。でも、お金は「自分が生み出した付加価値」を示すもの。ということは、お金を見つめることは自分を見つめることだとも言える。だからこそ、お金と冷静に向き合い、自分の生み出した価値をどう消費するか、何に投資するかを真面目に考えることも非常に重要だと思うんです。
みんなのお金の使い方で
社会が変わる!
山田 「みんながお金をどう使うかによって社会が変わっていく」ということは、もっと意識されたほうがいいですね。たとえばネットの世界ではよく「ブラック企業批判」が起きますが、ブラック企業がなくならないのは、「安いから」といった理由で消費者が安易に商品やサービスを利用し続けるからだと言うこともできます。ブラック企業をなくしたいなら、その会社の商品やサービスを利用しなければいい。
「消費が社会を動かす」というのは非常に現実的な話で、声高に何かを言うよりも、消費や投資こそ社会を変え得るのだと思います。
藤野 株式投資を通じて良いと思う会社を応援することだって、社会を変える手段の1つですからね。
山田 しかし、「投資」については「自分には関係ない特別な話」と思ってしまう方が多い。これは「働いてお金をもらい、消費する」というのは「上」からもらったお金を「下」に流すイメージなのに対して、「株や投資信託を買い、それを売る」というのはいわば「水平的なお金の流れ」だからではないかと思います。
みんな、投資の「水平的なお金の流れ」に慣れていないんじゃないでしょうか。僕は新刊『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』で投資の話をほかの話と明確に分けて書いたんですが、これは一般の方には投資の話はどうしてもつかみにくいだろうと思ったからなんです。