光があるから役に立つ
「眼」の機能

 では「視る」とはどういうことでしょう? 旧約聖書の創世記に神が言ったとされる「光あれ」の言葉があります。その言葉通り、太陽光があって、その光刺激に対応した器官として進化・発達を遂げてきた器官、それが私たちの「眼」です。光が無ければ形も色も認識できないように、眼は光あっての器官なのです。

「視る」は光が眼に飛び込むところからスタートします。「光の正体は何か?」これまでニュートン、アインシュタインまで、歴代の学者たちが実験に実験を重ねた結果、現代物理学において、光の正体は「粒子の性質と電磁波の性質をもった素粒子である光子(フォトン)である」と考えられています。シンプルにいうと、光も物体なのです。

 粒であり波でもある光子(フォトン)は、眼に入ると、眼球の後ろ側にあるスクリーンのような場所、網膜に到達します。網膜はわずか0.2~0.3ミリメートルの薄さですが、ひとつの眼の網膜には1億個を超える「視細胞」が存在します。視細胞は光による物理信号を、電気信号にする変換器としての役割を担っています。神経伝達は「電気信号」によってのみ行われるため、変換された電気信号は神経を通じて、脳の後ろ側にある視覚野に伝達され、そこで情報処理されて色や形を伴った「像」として認識されます。

目に見えている「色」も
光の波長の脳内変換にすぎない

 ここで、色と形について考えてみましょう。シンプルに言ってしまえば、色も光の波長の脳内変換です。太陽光は無数の波長の光の集合体であり、私たちには白に感じられます。太陽といえば、赤やオレンジ、黄色のイメージがありますが、それらはあくまでも「地球から見た朝日や夕日の状態」であって、宇宙空間で撮影した太陽の光は限りなく真っ白です。

 逆に光が少ない場合は、どんどん黒に近づいて感じられます。宇宙空間にあるブラックホールは、物質である光子も脱出できないほど、高密度で強い重力があるため限りなくブラックなのです。厚手のアイマスクで目隠ししたら何も視えないのは、光が眼に到達しないから。かなり薄いハンカチで目隠ししても向こうがなんとなく透けて視えるのは、光が薄いハンカチを透過して眼に到達するから。暗い夜に川の近くを飛ぶ蛍の光が視えるのは、発光による光が眼に届いているからです。