そして光は物体にぶつかると「吸収」「透過」「反射」「散乱」など、いろんな反応を起こします。物体は、いろんな波長の光を吸収し、一定の波長を反射します。その光の反射を私たちの眼が受け取り、脳内で色と形を感じています。たとえば目の前に「赤いリンゴ」があるとします。

 赤いリンゴとは、
 A:人間の脳には赤として認識される波長(640~770ナノメートル)を反射し、
 B:それ以外の可視的な波長を吸収する物体
 ということになります。赤いリンゴの正体は「物体が反射した赤と認識される波長の光」を脳が処理したものだったのです。

 人間は「光と闇の世界」に生きていて、それぞれの脳で光の情報に「色」や「形」を与えている。白はいろんな光の集合体であり、黒は光が無い時に脳が認識する黒い世界である。ある物体は、ある物体に反射した光が眼に入り、視覚野で認識された像である。私たちは目の前の景色を脳で再構築した景色を視ている。「視る」の原理から考えると、そのように言えるかもしれません。

「緊張してフリーズ」を脱する
「視界を広げる方法」

「視ている」のは脳である、を確認したところで、ちょっとした質問&実験です。あなたの手は大きいでしょうか? それとも小さいでしょうか? 右でも左でもいいので、手のひらを顔のほうに向けて、手のひらを次の2つの方法で視てみましょう。

 A:手のひらの真ん中の一点を視る→手のひら全体を視る
 B:今いる場所全体の風景を視る→手のひら全体を視る

 さて、手のひらはどのように視えたでしょうか? Aでは手のひらは「大きく」感じられ、Bでは手のひらは「小さく」感じられたと思います。最終的に視ているものは「手のひら全体」ですから、絶対的なサイズに変わりはないはずですが、視え方は変わってきます。Aの時、「視野を拡大する方向に」眼は動き、調節されます。脳は、この運動の記憶と視えた結果を組み合わせて、手のひら全体を理解しようとします。Bの時は逆です。脳は「視野を縮小する方向の運動」と「風景から手のひらに変わる視覚情報」で手のひら全体を脳で認識します。言葉遊びのようですが、「大きく視ようとする運動が伴えば大きく視える」「小さく視ようとする運動が伴えば小さく視える」というわけですね。