どれだけ練習しても、コースに出ると緊張してしまい、思ったようにプレイできないのが、アマチュアゴルファーたちの悩みだ。平均スコア70台の超上級者から、90台の中級者まで、それぞれの課題を抱えた生徒たちに、レッスンプロとして実績豊富な尾林弘太郎と南田陽平は、どんな言葉をかけるのか。本稿は、本條強『ゴルフ白熱教室』(ちくま新書)の一部を抜粋・編集したものです。
欲と不安と迷いと緊張の中で
ナイスショットを放つには?
――中部銀次郎さん(編集部注/日本アマチュアゴルフ選手権で6勝を挙げた伝説のアマチュアゴルファー)は「ゴルフは心のゲームだ」と言います。全米オープン優勝者のトミー・ボルトは「心がショットを乱す」と言っています。では、その心とはいかなるものでしょうか。
それは仏教で言えば「煩悩」です。「心を悩まし煩わせる心の働き」です。煩悩は108もあると言いますが、ゴルフにおいては「欲」と「不安」と「迷い」が3大煩悩でしょう。これらの煩悩を消し、捨て去ることこそが良いプレーをもたらすというわけです。
ゴルフは心のゲームです。肉体や技術よりもいかに心を平静に保ち、我慢強くプレーできるか。そこに勝利や良いスコアがもたらされるわけです。ゴルフは「緊張」することが多い。たった一人で静かな場所で周囲の視線に曝されながら、目の前のボールを打たなければならない。
「欲」と「不安」と「迷い」がまぜこぜになった状態で、ナイスショットをしなければならないのです。そうしたことから、緊張しても上手く打つ方法を身につける必要がありますよね。しかし、それは、とても難しい。皆さんはどうですか?
生徒 ドライバーだと曲がってしまう不安や、違うクラブで打とうといった迷いも生じます。ウェッジショットではダフリとトップの不安が頭をよぎります。外したくないショートパットも緊張しますね。これらが解決できればいいのですが、煩悩の塊となってなかなか上手くいきません。
生徒 ゴルフは仲間たちと楽しくプレーする以外は、緊張を避けられないスポーツだと思うんです。ではなぜ仲間とのプレーは緊張しないかと言えば、自分の実力を友人たちが皆知っているからですよね。
ですから、コンペとかで初めての人とプレーする際は自分のハンデとか、平均スコアとかを正直に明かすことにしています。人はハンデの数だけミスをするのですから、そう思ってもらえれば気持ちが楽になります。
どうしても緊張してしまう場合は、周囲も緊張していると思うことにしています。緊張を受け入れて大きく深呼吸して平静になる。深呼吸は胸の動悸を抑える働きもすると言いますね。