息切れ、むくみ、体重増加…
心不全の初期症状

心臓のポンプ作用が低下すると、全身に送り出される血液の量が減少します。しかし、全身から心臓へ戻される血液の量は変わらないため、心臓に戻れない血液が全身の臓器や血管内に滞ります。
「急性心不全の初期の症状で分かりやすいのは、ちょっとした負荷で息苦しさを感じることです。坂道や階段を上ったり、重い物を持ったりしたとき、それまでになかった息切れが生じるなら、心不全の発症が疑われます」
これは、酸素を取り込む臓器である肺に血液が滞るために、十分な酸素を取り込むことができなくなるから。3カ月前、半年前と比べて急に歩行時に息切れを感じるようになった場合は、要注意です。
「次によく見られる症状はむくみです。急性心不全では、心臓に戻れない血液が全身に滞ることで体液量が増加し、全身がむくみます。特に顔や足がむくむと分かりやすいのですが、両足ともがむくみ、足の甲やすねを指で押さえた際にくぼみができて戻らない場合は要注意です」
また、体重の変化も生じるとのこと。心不全では体重が増加しますが、これは“太った”ということではありません。
「滞った血液が体に溜まっていることを意味します。食事量は変わっていないのに、1週間で2kg以上体重が増加し、足にむくみが出てきた場合は、心不全を疑う必要があります」
さらに心不全が重症化すると、歩行などの運動時だけではなく、安静時にも呼吸が苦しくなります。特に体を横にすると下半身から心臓に戻る血液の量が増え、さらに心臓への負担が大きくなるので、息切れが激しくなります。また、起き上がった姿勢に比べて内臓が肺を圧迫するので、呼吸自体も苦しくなります。
「この状態は上半身を起こすことで楽になりますが、これを“起坐呼吸”といい、急性心不全に特徴的な症状です。すぐに受診しましょう。起坐呼吸を放っておくと、体の中の酸素濃度が低下し(低酸素血症)、さらに心臓の負担が増加します。その結果息苦しさが増し、最悪の場合には意識がなくなることもあります」