薬物治療は、規則正しい内服が重要

 状態が安定している「慢性心不全」の治療は、生活管理と薬物治療が主となります。生活管理として最も重要なのは、うっ血しないようにするための塩分制限、そして過剰な水分の摂取を控えることです。また、過度な身体活動は心不全を悪化させますが、過剰な運動制限も心臓の循環調整力を低下させるので、状況に合わせた運動療法を行うことも必要です。

「薬物治療の効果を最大限に引き出すためには、規則正しく薬を内服することが非常に重要です。しかし、いずれのタイプの心不全においても、高齢の患者さんには薬をきちんと飲めない方や生活習慣の注意を守れない方も多く、薬剤師や看護師の介入や、家族によるサポートが必要となることもあります」

 心不全は、悪化と回復を繰り返しながら徐々に病状が進行します。いったん症状が改善しても、心不全が完全に治ったわけではありません。心不全が悪化するのを防ぐためには、早期発見が非常に重要になります。

「虚血性心疾患、弁膜症、心筋症などの共通の症状としては、坂道を上るなどの運動をしているときに胸が締め付けられるように感じること。しかし、その症状が頻繁に起こるようだと、心不全はかなり進行してしまっている可能性があります。心不全の早期発見のポイントは、体重を定期的に測定して急に増加していないかを確認すること、足のむくみがないかを確認することです。異常を認めたら、早めに診察を受けるようにしましょう」

 心不全の最大の原因疾患である虚血性心疾患を予防するためには、動脈硬化を防ぐことが必要です。そのためには、バランスの良い食事を心がけ、塩分の摂取を控えること。また、カロリーの摂取を適度にすることも大切です。

「喫煙は心不全の危険因子です。喫煙習慣がある人は禁煙を強くおすすめします。また、心臓の循環調整力の低下を防ぐため、1日に20~30分程度の有酸素運動(ウオーキングなど、軽く息切れがする程度の運動)を行うことも有効です」

(監修/藤井健一 関西医科大学病院准教授)