有効求人倍率だけでなく、失業率などの数字についても、一定のものに保とうとする力がどこかで働いて、現場の実態が数字に反映されていないのではないか。日本の雇用の状況は悪化しているのに、その深刻さがそれほど数字に出ないような仕組みになっているのではないか。

 実際、Aさんがこれまでハローワーク経由で応募して、面接までこぎつけたのは、わずか5社。「50歳を過ぎて、人脈もない営業しか経験していないような人は本当に厳しい」という。

 Aさんは、学校に勤務した後、心が壊れて、1年ほど空白期間があったという。

 その後、大手企業などを渡り歩いた後、最終的に勤めていた会社は、人件費削減の流れの中で辞めざるを得なくなった。

 ハローワークで仕事を探しているいまは何の手当てもなく、200万円ほどの貯蓄を少しずつ食いつぶしている状況だという。

「仕事なんていくらでもある」はウソ!?
求人に忍び込む“ブラック企業”

 Aさんが3月9日、都内のハローワークで「東京及びその近隣」の求人を調べたところ、1週間以内に受理された求人は、50歳でもパートを含めて2万832件(フルのみ1万2215件)。1ヵ月以内に受理された求人は、7万1418件(フルのみ4万1733件)あった。

「仕事を選ばなければ、仕事なんていくらでもあるではないか」

 時々、読者の方からも、そんな声が寄せられてくる。

 しかし、Aさんはこう言う。

「じゃあ仕事を選ばなければ雇ってもらえるのかというと、そうともいえない。例えば、介護職の人材が足りないと言われていますが、採用側も人を選んでいるんです。たとえヘルパーの資格を取っても、中年男性の需要はないと言われています」

 求人情報の仕事の内容にも、目を向ける必要がある。

 求人の中には“ブラック企業”も少なくないという。

「例えば、 “保険会社の調査員 中高年も歓迎”と書いてあったので応募してみたんです。すると、交通事故の現地へ調査に行き、警察や当事者に話を聞いて、分厚い事故調査レポートを書く仕事が交通費込みで1万円という歩合制でした。宅配弁当などの配達でも、自分の車を使う安い賃金の求人がある。最近こうした、信じられない金額で個人事業主として委託契約を結ぶような仕事が多いんです」