2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は富士通、NTTデータなど「ITベンダー」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 笠原里穂)
ITベンダー主要4社では
富士通が唯一減収
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のITベンダー業界4社。対象期間は2023年8~12月期の四半期(4社いずれも23年10~12月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・富士通
増収率:マイナス0.1%(四半期の売上収益9308億円)
・NTTデータグループ
増収率:6.1%(四半期の売上高1兆976億円)
・野村総合研究所
増収率:6.2%(四半期の売上収益1880億円)
・NEC
増収率:3.8%(四半期の売上収益8445億円)
ITベンダー4社では、NTTデータグループ、野村総合研究所、NECの3社が前年同期比で増収となった。その一方で富士通は、微減ではあるものの、ITベンダー主要4社で唯一の減収に陥った。
子会社が英国の郵便局に納入したシステムに欠陥があったことによる「英国史上最大級の冤罪(えんざい)事件」の渦中にある富士通だが、足元の業績も厳しい。24年3月期第3四半期は、営業利益が前年同期比72.2%減の大幅減益で、24年3月期の通期業績予想の下方修正を余儀なくされたのだ。
ただ、英国の事案による影響は、現時点で「予想することは困難」という見解を富士通は示しており、業績には織り込まれていない。では、富士通が大幅減益に苦しむ要因は何なのか。次ページでは、各社の増収率の推移を紹介するとともに詳しく解説する。