世の中にありそうでない
唯一無二の商品を追求

建設会社が地元の洋菓子店の事業を承継「安全&おいしい」を追求し人気を呼ぶ伝統の味を進化させた「黄金井パフ」。クラフトビールとの出合いを契機に、大人のためのおつまみ焼き菓子「ビアドルセ」も誕生。黄金井パフの中に詰めるカスタードクリームには香料を一切使わず、マダガスカル産バニラビーンズシードを使用(上、中)。地元で愛されたお菓子の歴史をつくり続ける(ビルド)、全国においしいお菓子(ドルセ)を届けるという思いから命名した「菓子工房ビルドルセ」のメンバー(下)
●金澤建設株式会社 事業内容/建築・土木、菓子製造販売、従業員数/18人、所在地/東京都小金井市東町4‐16‐26(菓子工房ビルドルセ:東京都小金井市東町4‐38‐17‐1階)、電話/042‐381‐3158、URL/kanakk.combuilddulce.com

 その一つが原材料の見直しだ。黄金井パフの開発に当たっては、食の安全への関心の高まりも受け、「トランス脂肪酸を含むショートニングの代わりに米油、白砂糖をてんさい糖に代え、できるだけ食品添加物などを使用しない商品作りを目指しました」と大恵氏。

 二つ目が、健康への配慮に加えフードロスにも対応した商品開発への挑戦だ。カスタードクリーム作りで大量に余る卵白のメレンゲを使って生み出したのが焼き菓子の「黄金井ココ」。小麦粉の代わりに国産米粉を使い、フレーバーとして国産イチゴで作ったイチゴパウダーを採用するなど妥協なく原材料を厳選している。スイーツ業界の常識にとらわれず、「体に優しくておいしい」を追求した結果、唯一無二の商品誕生につながった。

 こうしたこだわりを踏まえ三つ目に挙げられるのが、コロナ禍を機に21年、チームとして思いや提供したい価値を再定義したリブランドへの取り組みだ。新たなブランドコンセプトは「We build safety and tasty! わたしたちは『安全』と『美味しい』をつくります」。商品パッケージも黒とゴールドでシックに刷新し、ギフト需要の取り込みも目指す。

 大恵氏は、「これからもチームワークで、お菓子の枠を超え、世の中にありそうでない、新たな商品ジャンルを生み出していきたいです」と展望を描く。異色の新規事業の躍進には講演や取材、コラボレーションの依頼も多数舞い込み、「建設部門にもいい刺激となっています」と社長の貴史氏。建設業界以外の新たな交流から受注につながるなど、副次的効果も生まれている。

 地元への愛が生んだ建設会社のチャレンジは、事業承継だけでなく、新規事業にトライする上でも参考になりそうだ。

(「しんきん経営情報」2024年3月号掲載)