理由は明快で、正規雇用は安定しているから。安定していないが、賃金が高い非正規雇用を選ぶか、安定しているが、賃金が低い正規雇用を選ぶか、は本人次第。要するに、リスクとリターンが、しっかりと相関している。

 元看護師からワーホリに行った藤田さんは、介護の仕事の時給に「こんなにもらえるのかと思った」と語っていたが、それは非正規雇用の時給だったことも大きい。実に正規雇用の時給に比べて1000円もの差があったという。

 ワーホリは基本的な考え方として「旅をしながら」なので、オーストラリアの場合、一つの雇用主のもとでの雇用は最長6カ月とされている。6カ月経てば、別の仕事を見つけなければいけない。一方、カナダは就労についての期間の制限はない。

人手不足の農作業で
もらえるセカンドビザ

 ワーホリは、多くの国が滞在期間を1年間としている。カナダ、ニュージーランドなどがそうだ。だが、オーストラリアは最長3年まで過ごすことができる。

 一定条件を満たすことで、2年目も滞在できる「セカンドワーキングホリデービザ(セカンドビザ)」、3年目も滞在できる「サードワーキングホリデービザ(サードビザ)」の申請が可能なのだ。

 端的にいえば、ワーホリ1年目に特定の仕事に約3カ月(88日間)従事すれば、2年目の滞在が可能になる仕組み。また、ワーホリ2年目に6カ月間従事すれば、3年目の滞在が可能になる。

 例えば、地方都市での農業や農業関連の仕事(ファームジョブと呼ばれる)に就く。バナナやイチゴ、林檎などのフルーツ、トマトやパプリカ、アボカドなどの野菜の収穫(ピッキング)もそのひとつだ。

 つまりは、がんばってくれたご褒美に翌年のビザがもらえる、というわけなのだ。ファームジョブ以外にも、果物や野菜をパック詰めする仕事や肉の加工場など食関連から、オペアと呼ばれる地方の家庭での家事手伝い、リゾート地でのサービス業(真珠養殖といった変わったものも)、建設現場での仕事など、条件を満たす仕事はさまざまにある。

条件を満たすと、2年目、3年目も滞在できる同書より 拡大画像表示

 現地のワーホリの間では、そのための情報が飛び交っている。どこで、何をするのがいいのか、どんな仕事が魅力的か、などだ。ファームジョブの募集は、政府のウェブサイトでも公開されている。

 それにしても、自国ではなかなか人が集まらない仕事をやってもらうことで、翌年のビザというご褒美を出すわけだ。人手は確保され、働き手は稼げる上にビザがもらえる。これまた、なんとも合理的なシステムである。