「核の時代でも侵略戦争は起きた」ウクライナ戦争から日本が学ぶべき安全保障の教訓Photo:Contributor/gettyimages

3年目に入るウクライナ戦争は、フェーズが再び変わってロシアが攻勢を強める状況のもとで、ウクライナがいかに戦力を立て直し、欧米など西側諸国が軍事、外交両面で有効な支援を続けるかが重要な鍵になると、小泉悠・東京大学先端技術研究センター准教授は語る。この2年間の動きから見えた、ウクライナ戦争の本質と日本の安全保障への教訓を聞いた。小泉氏は、すさまじい兵と装備の損耗も顧みないプーチン大統領のウクライナの『属国化』への執着の背景には「ロシアとウクライナは一体だという民族主義的な感情や歴史認識がある」と分析。「軍事衝突となればお互いが滅びかねない核の時代でも、時の専制的な為政者の執着によって古い時代の侵略戦争や大規模戦争が起こり得ることを示した」として、日本も事前の戦争抑止に真剣に取り組むことが重要だと語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

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「特徴」はドローン戦と消耗戦
人命が軽いロシア、戦車も3000両失う

――戦争にはそれぞれの戦争が持つ「キャラクター(特徴)」と「ネイチャー(性格)」があると言われています。この2年間の戦況やロシア、ウクライナ政府の対応から、ウクライナ戦争の「特徴と性格」をどう分析しますか。

 まず戦争の特徴でいうと、二つ言えることがあります。一つは、ドローン戦争ということです。ドローンがこれだけ大規模に投入され力を持った戦争は過去にはありません。

 あえていうなら2020年のアルメニアとアゼルバイジャンの間で行われたナゴルノ・カラバフを巡る第二次紛争がありますが、あれは4万~5万人規模の軍隊による80日間ぐらいの戦争です。今回は、国土や人口、経済規模も旧ソ連のナンバーワンとナンバー2の国が2年間戦う状況で、ドローンが大きな役割を果たしています。

 そしてもう一つの特徴は100年前の第一次大戦のような消耗戦です。双方がすさまじい兵と物資の損耗をしています。お互いここまでの消耗戦は考えてもいなかったと思います。核の時代に二つの大国同士がここまで本格戦争を続けるのには、やはり根深い要因を考えざるを得ません。

「核の時代でも侵略戦争は起きた」と指摘する小泉氏。次ページでは、2年間で見えた戦争の背景やプーチン大統領の思惑、日本が学ぶべき安全保障の教訓について解説してもらった。