ファミリーマートが昨年12月に発売したスウェットが好評だ。SNSでは一時「売り切れが続出している」といった報告が相次いでいた。ただし同商品は2990~3990円と、コンビニ商材の中では飛び抜けて単価が高い。ユニクロなどの競合がひしめく中、なぜファミマのスウェットは早くも顧客の支持を勝ち取ったのか。小売業界に精通するジャーナリストが考察する。(流通ジャーナリスト 森山真二)
「ファミマのスウェット」は
コンビニ商材では断トツ高価
「コンビニエンスストアで衣料品は売れない」――。
とあるスーパーマーケット運営企業の幹部が、かつてこう語っていた。
ところが、そんな小売業界の定説を覆し、ファミリーマートのスウェットが好調だ。まだ正式な販売数は明らかになっていないが、SNSでは非常に好評で、一時は売り切れる店舗が続出していたとの投稿も見られる。
衣料品の売り方といえば、数ある種類から色や柄を選んでもらうのが一般的だ。だが、ファミマのスウェットの色は黒のみ。種類もトレーナー・パーカー・パンツの3種類のみと、選択肢が初めから絞り込まれている。そのためユーザーは迷わなくて済む。
一方でファミマのスウェットは、トレーナーとパンツが2990円、パーカーが3990円と、コンビニ商材の中では飛び抜けて単価が高い。トレーナーはユニクロのスウェットシャツ(2990円)と全く同じ価格である。ユニクロを意識した価格設定なのだろう。
単価が高くてもファミマのスウェットは「大人気」「想定以上」だという評判を耳にするので、衣料品の売り方も変わったものだと驚く。かつては競合・ローソンの幹部も「単価の高い商品はコンビニでは売れない」と述べていたが、同業者の見立ても覆した形だ。
ファミマはなぜ「常識破り」のスウェット販売に打って出たのか。他の商品も含め、ファミマのアパレル事業はなぜ軌道に乗り始めたのか。今回はこれらの点を考察していきたい。