今から8~9年ほど前。コンビニ大手はこぞってレジ横にドーナツ売り場を設け、オリジナルのドーナツを売り出した。人気チェーン「ミスタードーナツ」からシェアを奪う可能性も指摘され、経済誌には「ドーナツ戦争」の文字が躍った。だが、今ではコンビニの店内から什器(じゅうき)は消え去り、「戦争」の勝敗は鮮明になっている。そもそも、なぜコンビニ各社はドーナツに参入したのか。そして、なぜ期待外れに終わったのか。要因を解き明かしていく。(流通ジャーナリスト 森山真二)
コンビニのレジ横から
いつのまにか消えたドーナツ
コンビニエンスストアのドーナツはどこに消えたのか? 2015~16年頃、コンビニ大手各社は競ってドーナツの什器を導入し、レジ横のホットスナックコーナーでドーナツを売り出した。
ところがどうだろう、今では雲散霧消し跡形もない。菓子パンと同じ商品陳列棚でドーナツを売っているチェーンもあるが、レジ横の什器では取り扱っていない。コンビニのドーナツはどうしたのだろうか。
その理由を探る前に、そもそもコンビニ大手がドーナツに参入した裏事情を説明しておこう。セブン‐イレブン・ジャパンのライバルに当たる、某大手コンビニチェーンの関係者は当時、各社がこぞってドーナツに手を出した要因をこう語っていた。
「おでんをやめる布石ではないか」